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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第090号

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ISASメールマガジン   第090号       【 発行日− 06.05.30 】
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★こんにちは、山本です。

 先週は、関東地方も梅雨のような天気が続きましたが、実際に梅雨入り宣言が気象庁から発表されたのは九州南部までです。
「本当に、未だ梅雨ではないんですか!!!」
と、文句を言っても仕方がないのですが、洗濯物がシャキッと乾かないので、少しは晴れる日が続いて欲しいです。

 第088号でお知らせした到達高度世界記録をめざしていた気球BVT60-2号機の実験は、上層風が実験実施に適さないため延期されました。。詳しくは以下をご覧ください。
http://www.isas.jaxa.jp/j/snews/2006/0511.shtml

 今週は、宇宙情報・エネルギー工学研究系の平林久(ひらばやし・ひさし) さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:東アジアの時空
☆02:君が作る宇宙ミッション参加者募集締め切りまであと少し!
☆03:宇宙科学研究本部 一般公開のお知らせ
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★01:東アジアの時空

 東アジアの電波天文学の仲間が南京の天文台にあつまってワークショップを開くことになりました。それぞれが運用している電波望遠鏡で同時観測して結びつけて東アジアの大きさの電波望遠鏡として働かせるためです。これにはVLBIという特殊な観測法が使われます。

 中国科学院の南京天文台は、古くから紫金山天文台と呼ばれてきました。紫金山天文台天文台はずっと西の青海省にミリ波電波望遠鏡をもっています。ミリ波では乾燥地帯がいいからです。そこで、南京でのワークショップが済むと皆でこの電波望遠鏡のあるところに視察にいくことになっています。

 南京から西安、西寧と、飛行機を乗りついで行きます。なんですか、南から、西へ、西へと行く感じ(漢字)ではありませんか。地図によると、それから陸路をさらに西へ西へ数百kmをたどって電波天文台に着きます。途中には青海湖という大きな湖があるではありませんか。

 こころは砂漠の中の大きな大きな海を思い浮かべます。きらめく青海の波を文様のように想像します。また、わたしたちの1000年前の文化が中国から海原を越えてやってきたことに思いを馳せます。はては、源氏や惟盛が舞ったという「青海波」を思い浮かべます。

 帰りの旅は西寧に戻ってから北京、東京と乗り継いでもどります。ここも漢字どおりの移動ですね。

 「宇宙」という言葉は中国の古典に載っていて、「宇」は天地四方、「宙」は時の流れをあらわすと記されているそうな。

 そんな時空のなかで、わたしたちは東アジアの科学コミュニティが純粋に基礎科学のうえで仲良く協力できることをしようと思っています。私自身は、仲間とすすめている次世代のスペースVLBI計画のために、東アジアの科学コミュニティが仲良く協力してくれるような状況ができることを期待しています。この計画は、電波天文衛星「はるか」を使ったスペースVLBI計画(VSOP計画)をさらに進化させたもので、VSOP-2計画と呼んでいます。今、東アジアには、電波望遠鏡をもったコミュニティとネットワークが日中韓でできあがりつつあるのです。

 わたしは、たとえば「唐」という時代は凄かったと思うのです。唐は国際国家として、西の果てではアジアを横断してヨーロッパまで交易でつながり、優秀な自国人や外国人を登用し、宗教や文化にこだわらずおおきな天地を世界としていたようです。また、鑑真は苦労して東夷(遠い)から億劫なんて言わずに真摯にやってきてくれました。交通手段も通信手段もずっと幼稚な時代の、なんともすごい世界国家ではありませんか。

 わたしたちは、まだまだ気宇の壮大さには唐人にまけているかもしれません。

 いやいや日本も十分がんばっていたんでしょうね。東大寺の大仏をつくりあげ、中国から人も呼んで開眼供養も派手にやったようです。当時は中国から人を招くのは、お月様から招くぐらいに匹敵する国家事業ではないでしょうか。

 とかく西欧との協力が多いなかで、わたしたちはもっとアジアでの仲間とよき協力ができるのが好ましいと思います。同じ文化を共有するわたしたちは、そういうこともしないでいるのはとても変だと思うのです。

 実は、去る5月には台湾の科学アカデミーの天文学研究所を訪問しました。これからの研究協力をすすめたいと両者で思ったからです。国内旅行のような気安さで行けて、時差はたったの1時間、目の色も髪の毛も同じ、漢字を共有し、どことなく思考法や振る舞いが似ている。いろいろな歴史の経過があり、攻めたり攻められたり、影響しあったり、東アジアの時空はやはりある共通性をもっていると言わざるを得ません。

 ところで「唐」の都「長安」ってどこだっけ?

 あ、西安が長安でしたね。そう思って地図をながめてみると、西安って、 唐の帝国のすわりからいうと実にいい場所にありますね。

 こんどの中国の旅では、1000年前の日本人が中国の西域寄りに立ち寄った想いで、たとえ短時間でも(瞬間でも)過ごしてみようかと思っています。決死の覚悟で中国に渡り、何年も何十年も中国で学び、勤めた1000年前の日本人学生にはまったく較ぶべきもないけれど。

(平林 久、ひらばやし・ひさし)

VSOP計画については
新しいウィンドウが開きます http://wwwj.vsop.isas.jaxa.jp/

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※