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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第79号

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ISASメールマガジン   第079号       【 発行日− 06.03.14 】
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★ こんにちは、山本です。

 最近、以前は月に10通程度だったISASメールマガジンへのメールが、毎日5〜10通くらい届きます。ISASメールマガジンも有名になったものだと喜んでいると、その殆どがスパムメール(いわゆる迷惑メール)です。モチロン! ごみ箱へ直行なのですが、他のISASのメールアドレスへも毎日大量のゴミメールが来ているようで。

 先ほども、「スパムメールのおかげで、毎日無駄な時間と労力を使わされる!!!」とお怒りの電話が……
私の所属部署は、所内ネットワークの管理もしているので、「イロイロ対策を立てて努力しています。」と返事しましたが、これでは政府の答弁のようですね

読者の皆さんのメールが沢山来るよう待っています。

 今週は、固体惑星科学研究系の岡田達明(おかだ・たつあき)さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:月へのカウントダウン
☆02:小惑星探査機「はやぶさ」再びテレメトリデータ取得開始!
☆03:「あかり」の今後の初期運用について
☆04:「はやぶさ」のイトカワ到着を記念してポスターを制作しました。
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★01:月へのカウントダウン

 「ヨーイ!ドン」で月に向かってスタート!
 一体、いつ頃の遠い将来の話をしているんだ、というと実は来年の話。2007年は人類の宇宙への挑戦にとって重要な1年になりそうです。

 ひとつのビッグニュースは、国際宇宙ステーションISSの開発計画の詳細がこのほど再調整され、ISS全体としては縮小化されたものの、日本が開発するモジュール「きぼう」はついに、予定通り3回に分けてスペースシャトルで打ち上げられ、地球を周回する軌道で活躍する日が来ることになりました。日本における「有人」宇宙活動の本格化に向けてスタートするのです。

 そしてもう一つは、「無人」月探査のレースが展開されます。レースといっても、早く到着したら勝ちというような、勝敗を争うというものではありません。世界各国が、月を目指して鋭意開発中です。目的は国によって若干異なるようで、中国やインドはとにかく国力の粋を結集し、月に探査機を送ることを最大の目標としている感があります。善し悪しは別にして、国家の強い意思とエネルギーを感じずにはいられません。米国やヨーロッパでは、将来の人類の宇宙進出の挑戦へのステップとして、高精度の科学探査に加えて、技術の成熟化を月探査で目指します。

 さて、日本ではもともと月の科学探査を行う計画が立ち上がっていました。月や惑星の内部構造を調べることを目的に、独創的な貫入型プローブであるペネトレータを開発して、その第一歩を月で実現を目指すルナーA計画。過去最高の分解能・精度で月面全域の地図や地質図などを構築し、それを基にして、既に得られた月の知見を発展させて月の科学の発展、さらには地球型の惑星の進化史の解明を目指すセレーネ計画。それに加えて、将来の月探査、あるいは月惑星探査の構想も検討が活発に進められています。

 これまで、「はやぶさ」などの探査計画に参加してきましたが、やはり一番厳しい思いをしてきたのは、ロケットや衛星のトラブル等が発生すると、他の計画にまで波及し、打上げ時期がずるずると遅れてゆくことです。
関わった学生達が打上げを待たずに卒業、メーカーの技術者の引退や退職など、だんだん人が入れ替わってゆくところに悲哀を感じることもあります。セレーネの打上げは2007年で、着手から5〜6年で打上げの予定が、マル10年かかることになります。打ち上がるだけでもラッキーですけど。逆に強運の持ち主もいて、「はやぶさ」のデータにありつき、さらにセレーネにもタイミングよく間に合うという「超ラッキー」な学年もいます。

 セレーネは打上げが延びた結果、熾烈な「国際月レース」に巻き込まれてしまったわけですが、現在は気を取り直して、フライトに向けて鋭意準備中です。セレーネの科学観測の内容は同時期のほかの探査機に比べて無敵なはずであり、着実に進めれば結果が付いてくるものとわれわれは考えています。

 セレーネにはわれわれの観測機器(蛍光エックス線分光計=月面の元素組成を調べる装置)のほか、地形や地質、表層下構造、重力場、磁場、月周辺プラズマ環境など、全部あわせて14の機器が搭載されます。月周回軌道から、何故かNHKのハイヴィジョン放送も計画されていますので、その節には最新の科学成果とともにお楽しみ頂けるのではないかと思います。

 今この原稿を執筆しながら、明日行われる担当観測機器の機械環境試験(打上げの時の非常に激しい振動環境に耐えられることを確認する試験)が念頭から離れません。夢にも出てきそうです。これだけ機器が多いと、「はやぶさ」のときには経験しなかった機械環境などの試験装置の順番待ち、時間調整という予期せぬ(?)新たな課題が発生しています。3月末の機器持込に間に合わせるべく、眠れない日々が続いています。眠れない日々は打ち上げまで1年数ヶ月、打上げ後も1年以上続くのでしょうか。。。
 忙しいうちが花だと思って頑張る今日この頃です。

(岡田達明、おかだ・たつあき)

http://www.isas.jaxa.jp/j/enterp/missions/selene/index.shtml

月探査情報ステーションのページ
http://moon.jaxa.jp/ja/index_fl.shtml

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※