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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第61号

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ISASメールマガジン   第061号       【 発行日− 05.11.01 】
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★ こんにちは、山本です。
 ISASには落葉樹がたくさんあります。正門から、紅葉(黄葉)した葉が舞い落ちてくるのを見ながら研究棟まで歩くのは、晩秋の風情たっぷりでナカナカいいものですが…… お掃除をする方の身になってみると、掃いても掃いてもキリがない…… 『風情』とは両立しないようです。
 今週は、宇宙輸送工学研究系の羽生宏人(はぶ・ひろと)さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:ペンシルロケット50周年記念イベントの舞台裏
☆02:「はやぶさ」サンプル採取の予定日決まる!
☆03:宇宙学校・福井 <宇宙のなぞにせまりたい!>
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★01:ペンシルロケット50周年記念イベントの舞台裏

 2回目の寄稿になります。今回はNO.50の続きになりますが、この夏に開催されたペンシルロケット50周年記念イベントの舞台裏をご紹介します。

 私はペンシルロケットの飛翔計測全般を他の若手スタッフと共に担当しました。主に、飛翔速度の計測と解析、高速度カメラによる映像取得です。
当初、時速250kmを超える速度で飛翔するロケットの機体をどうやって壊さずに捕獲するか悩みました。当時は砂袋のようなもので捕獲していたようですが、幕張メッセでの一般公開イベントですので、最後に砂が飛び散るのはどうもスマートじゃない。なんとかならんか、と別の方法を思案していました。
そんなある日、ISASの某研究室で大学院生がダーツで遊んで(?)いるのを見かけました。標的を外すと壁に傷が付くということで、何かの工作残材だったと思しき、標的より一回り大きな発泡ウレタンを背面に置いていました。様子を見ていると、案の定、ダーツは的ではなくウレタンに刺さっています。
「下手だなぁ。。。」
(ん?ちょっと待てよ??)そこでひらめきました。
「こいつを重ねれば・・・」

 早速、チームに提案し、重ねたウレタンに機体の模型を突き刺してみると具合がいい。しかも材料が安い。結局、あきる野実験施設や能代実験場で実施した予備試験では、この材料を10枚重ねることでうまく捕獲できることを確認し、当日もこの手で行くことに決定されました。

 今回私たちは、当時は計測できなかったランチャ(打ち出し部)内の速度履歴を計測することにしました。こちらは電気標的を使うわけにはいかない ので、光学センサを等間隔に設置しました。

 このセンサは、赤外線発光部と受光部で構成されていて、機体が通過すると赤外線を遮り、受光部の電気回路の電圧出力が低下する原理を応用しています。これで点火から捕獲までの一連の機体の運動を捉えることができるようになりました。また、観客には何が起こったのかわかりやすく説明するために、解析技術を駆使して試験後即時に速度履歴の紹介、映像再生を試みました。

 幕張メッセでは1日に3回の試験が予定されていました。特に1回目は記念イベントということもあって、少々硬い雰囲気。イベントが始まり、ステージに中山エミリさんが登場すると、会場も華やいできました。私もついつい見とれてしまいました。

 「リハーサルもうまくいったし、絶対大丈夫」
と思っていたのですが、刻々と迫る本番を前にやはり緊張してきました。
そしていよいよカウントダウン。

 直前、<無事成功しますように!!>と心の中で祈りました。
10、9、8・・・3、2、1(バン!!<発射音>)
結構大きな音だったような気がします。会場がざわめいている中、司会者は冷静に話を進め、計測卓では大急ぎで映像の即時再生の準備を進めていました。

「ハイスピードカメラ再生準備OKです!」
と隣のスタッフからのコール。自分のPCの画面のグラフも正常。
(うまくいった・・・)
「よし。こっちも準備OK!」
その後、司会者に促されてデータの解説をし、観客からの拍手の中、1回目の試験は無事終了しました。全身の力が抜けるようでした。

 2005年の夏は、このイベントの準備で掛かりきりでした。結果的にはとても記憶に残る仕事になったと思います。事故は絶対に許されない状況において、私たちは一丸となって本番を含む、計18回の飛翔実験すべて成功に導くことができました。精密なランチャの芯出し、ロケットの組立て・検査、計測系の設置、管制・・・どれを欠いても成功はしなかったと思います。

 きっと次回50年後の“ペンシルロケット100周年記念イベント”を担当するであろう人たちも50年前、100年前を想像しつつ、この興味深い実験を緊張しながら実施することでしょう。

(羽生宏人、はぶ・ひろと)

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 当日の様子をレポート
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 50年目の再現 ペンシルロケット水平試射(ビデオ)
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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※