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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第54号

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ISASメールマガジン   第054号       【 発行日− 05.09.13 】
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★ こんにちは、山本です。
 ついに「はやぶさ」が「イトカワ」に到着しました。これから約2ヶ月に渡って「イトカワ」の測定やサンプル採取等の科学観測が行われます。
 先週末から毎日「はやぶさ」のニュースが更新され、ISASメールマガジンの読者も毎日10人以上のペースで増加しています。先週・今週と「はやぶさ」一色のISASメールマガジンですが、ウェブページではISASのいろいろな話題が掲載されています。併せてお楽しみください。
 今週は、システム運用部の周東三和子(しゅうとう・みわこ)さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:多足の草鞋
☆02:「はやぶさ」、イトカワに到着!
☆03:『宇宙・夢・人』『内惑星探訪』更新しました。第9回
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★01:多足の草鞋

 私が宇宙科学研究本部の前前身である東大宇宙航空研究所に入所した頃は、丁度L-4Sロケットで日本初の人工衛星打上げに挑戦しているときだった。大学の講座制の人員ではロケット打上げ要員はとてもまかなえず、定員と全く同様に働きながら1年雇用を繰り返す非常勤職員が、事務系、技術系併せて150人近くも働いていた。私もその一人だった。

 その頃は、配属された研究室で、教官たちと一緒にプログラムを組み、装置を作り、実験し、解析しながら、それぞれの技術職員が専門性を身につけていった。それが、ロケットの打上げや、ロケットモータの燃焼試験となると、実験班に所属し日頃の研究室の業務とは異なる分野の仕事を担っていた。日本初の人工衛星「おおすみ」以降は順調に科学衛星の打上げが続き、技官の仕事もますます忙しくなった。しかし、公務員の定員削減政策により毎年定員は減らされつづけ、定年退職で空いたポストをやっと非常勤職員で埋めても、技術職員の総数は減り続けた。教官は定員削減の対象外だったので、技術職員は減った人数でこれまで以上の仕事をこなしてゆくことになった。2足、3足の草鞋を履くのは当たり前となった。

 その流れは東大宇宙航空研究所が文部省直轄の大学共同利用機関になっても変わらなかった。定員削減の影響が今でも残っていることは、技術職員の年齢構成を見れば明らかだろう。50歳代が半分以上を占め、40代はほとんど空白、ここ数年でやっと採用された20〜30代が残りを占めている。
というわけで、ほとんどの技術職員が相変わらず2足、3足の草鞋を履いている。では、何足もの草鞋が苦痛かというと、必ずしもそうではない。違った分野で自分の技術を活かす、異なるチームで仕事をすることで仕事の幅が広がっていると思えるのだ。

 いろいろな職場を転々として仕事を覚えていく、職階をあげていくという方法もあるかもしれない。しかし、それでは、どこでもうまく対処できる人間は育つだろうが、自分の技術をチームの中で活かし、後輩に受け継ぎ、プロジェクトの実現に生き甲斐を感じる人間は育っていくのだろうか。私はどんなに忙しくても多足の草鞋を履きこなして、JAXAに宇宙研ありという仕事を目指したい。

(周東三和子、しゅうとう・みわこ)

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※