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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第52号

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ISASメールマガジン   第052号       【 発行日− 05.08.30 】
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★ こんにちは、山本です。
 先日、小学校4年生の読者からメールが届きました。
「こんにちは。いつもメールマガジン楽しみにして読んでます。私は小学4年なので読めない漢字があります。そのつどお母さんに聞かないといけないのでもう少しふりがなをふってくれるとうれしいです。大変だと思いますがよろしくお願いします。」
まさか小学生の読者がいるとは思わなかったのでとても嬉しかったのですが……
《知らない》《分からない》言葉ならばやさしい解説を掲載したいと思いますが、《読めない漢字》は、お母さんに聞くのではなく、国語辞典や漢字辞典を引いて、自分で調べることをおすすめします。
 今週は、システム運用部の長木明成(ちょうき・あきなり)さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:小笠原出張回顧録
☆02:「はやぶさ」航法カメラでもイトカワ撮影に成功
☆03:「すざく」搭載観測機器(硬X線検出器)ケンタウルス座の巨大ブラックホールの観測に成功!
☆04:小型科学衛星(INDEX)は「れいめい」と命名
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★01:小笠原出張回顧録

 去る7月10日、M-Vロケット6号機が内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられたことは、もちろん皆さんご存じのことと思います。JAXAには打ち上げたロケットや人工衛星を追跡するための施設や設備がいくつかありますが、その中の一つに今回の打上げで私が担当になった「小笠原追跡所」があります。追跡所があるのは小笠原諸島の中でもっとも大きな島である父島。
小笠原諸島は国立公園に指定されておりまだまだ多くの自然が残されているのですが、その一方で1900人ほどの人々がここ父島で実際に生活を営んでいます。
 私の触れた父島についてあくまで断片的な切り取りでしかありませんが、印象に残ったことをいくつかお伝えしたいと思います。

<小笠原追跡所とは?>
 小笠原追跡所はH-IIAやM-Vといったロケットの飛行経路や飛行状況などを確認するために追跡をする施設です。もともとは統合前のNASDAの施設であったものですが、M-Vでは1号機打上げの時からすでに旧宇宙研とうまく連携して追跡に使っていました。(私は縁あって3号機の打上げ以来小笠原は2度目の訪問です。)
 打上げでは、内之浦から送られてくる追跡用データをもとに追跡所のアンテナを動かしてロケットを追い、そのときにロケットから送られてくるデータを受信し内之浦にデータを送るとともに記録保存するという作業を行います。この時に重要なのは「通信回線を使ってデータを正確に受け取りそして正確に送り出せるか」で、幾度か成功して確立しているシステムなのですが小笠原入りして最初の試験のときはやはり緊張してしまいます。
 追跡所は父島の市街地からクルマで20分ほどかけて上った山の上にあって、敷地内の一番高いアンテナ台地からは市街地とおがさわら丸が停泊する天然の良港二見港を望むことができます。追跡所までの山道からの景色もまた絶景で、日中は心地よい風に吹かれながら目にしみるような海の青と島の緑を楽しむことができますし、夕暮れ時は夕日を見ながら黄昏れる人たちをちらほらと見かけたりします。
 今回は昼間の打上げだったのでロケットの飛行を目で追うことは難しかったようですが、夜の打上げともなればうっすらとですがその軌跡を追うことができると「言われています」。(私の担当部署ではフライトオペレーション中にそれを確認することができないのです。)

<島の生命線、二見(ふたみ)港>
 父島の表玄関である二見港は旅客船である「おがさわら丸」の他にも母島との航路を担う「ははじま丸」や貨物船が停泊する重要な港です。必要物資などはほとんどすべてこの港に集められるので島の活動はこれらの船の運航日や運行状態に大きく左右されます。
 たとえば新聞は一週間に一回、一週間分がまとめてくるので「新聞」ではなかったりしますし、船の入港日の前日はいろんなお店がお休みだったりします。「曜日感覚」というよりも「入港日感覚」といった感じです。
 必然的にこの港を中心として市街地が形成されています。公的機関である小笠原支庁舎や郵便局に村役場、主なショッピングスポット、レストラン、バー、多くの宿泊施設なども港の近くに集中していますが、それにもかかわらず日中の街中はけっこう静かで落ち着いています。涼しくなってきた夕方からは少しずつ街中や浜辺に人の姿が増えてきて話し声などでにぎやかになり、ごつごつした岩山の陰影がくっきりしてくる夕暮れが南の島の雰囲気を盛り上げてくれます。

(長木明成、ちょうき・あきなり)

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※