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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第34号

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ISASメールマガジン   第034号        【 発行日− 05.04.26】
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★ こんにちは、山本です。
 ISASは今『アメリカハナミズキ』が満開です。
夕方薄暗くなった頃、まるで木に雪が積もっているようです。
 今週は、科学推進部研究推進室研究マネジメント課の中島武幸(なかじま・ たけゆき)さんです。

―― INDEX――――――――――――――――――――――――――――――
★01:私と宇宙
☆02:原始星エンベロープの全貌 すばる望遠鏡で明らかに
☆03:特別コラム「ペンシルロケット物語 日本の宇宙開発の黎明期」
☆04:「第4回 君が作る宇宙ミッション」参加者募集!
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★01:私と宇宙

 長い間、大学の事務に携わり、ここ数年は、産学官連携関連の研究協力の仕事をしてきた私が、宇宙科学研究本部の研究マネジメント課に配属になって1年が経ちました。

 そんな私と宇宙との出逢いは、子供の時にみた旧約聖書に基づく星座の物語であったような気がします。内容は忘れてしまいましたが、様々な星座にまつわる物語が、神秘的な絵と簡潔な文章で紹介されていて、なにやら興奮して読んだ記憶があります。

 それから暫くは、特段に宇宙に対する興味を持つこともなく、青春時代に至って「埴谷雄高」や「稲垣足穂」、「ポー」などの作品を通じて、文学的な視点から宇宙と接触したことぐらいが私と宇宙の関わりの全てでした。
 しかしながら、それらの作家の作品群もそれほど真面目に読んでいるわけでもありませんので、個々の作品について語ることはできませんが、例えば、埴谷雄高の一連の作品の中に流れている宇宙観や、極端な例では、工作社(?)刊の稲垣足穂の「人間人形時代」の装丁(暗黒宇宙を連想させる黒い表紙の真ん中に、あたかもブラックホールを連想させるような穴が裏表紙まで空いている。)における神秘性のようなものに、興味を持ったに過ぎない程度のものです。

 数少ない、これらの私の宇宙との関係に共通することは、決して宇宙そのものに特に興味が有ったわけでなく、宇宙における未知の事象を通じて、人間の内なる宇宙(神秘性)に遊ぶことでした。

 ですから、極端に言えば、宇宙科学的興味で宇宙を考えたことは皆無に近く、気分としては宇宙は永遠に謎と神秘に包まれ、時々新たな謎とロマンを提示して、私を内なる想像の旅に誘うものであって欲しいという存在でした。

 そんな私が昨年の4月から、日本における宇宙科学の最先端の研究機関である宇宙科学本部の、それも研究マネジメント課という所に来たわけですから、その時受けたカルチャーショックは曰く言い難いものがあります。科学としての宇宙はもちろんのこと、その日から私はもう一つの宇宙を体験することになってしまったのです。

 私が僅かに持っていた、宇宙における謎やロマンは予算や書類や手続きとなり、神秘の世界への散歩は、ヘッドクォータや文部科学省へと変わって、そこに新たな宇宙が出現したのです。

 その宇宙では、未だに「はやぶさ」のように旨く航行することも、「ようこう」のように十分観測することも出来ませんが、光明を求めてイオンエンジンならぬアナログエンジンである両手、両足をばたつかせていますが、混沌宇宙ではさほどの効果もなく、行く先も定まらず、十分な成果を上げるまでにはいたっていません。

 せめて、科学本部における宇宙研究では、科学的な成果は勿論ですが、それと一緒に謎やロマンや、時々は物の怪までも宇宙から連れ帰り、私の前に提供して欲しいと思っています。

(中島武幸、なかじま・たけゆき)

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※