第2章 内之浦の登場

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悪路を克服して

悪路といえば、実験場が開設されて直後の内之浦はアクセスが甚だよろしくなかった。当時は東京からの出張には、22時間余に及ぶブルートレイン「はやぶさ」が便利であった。東京で乗ると翌日の夕刻に西鹿児島に着く。ここで日豊線に乗り換えて大隅高山に辿り着くと、すでに夜の9時、疲労は困憊の極に達している。翌朝内之浦行きのバスに乗り込むのだが、これがまた廃車をどこからか拾ってきたようなボンネット型のぼろ車で、凸凹の山道をぜいぜい唸りながら走る。何度もバスの天井に頭をぶつけながら、昼すぎにやっと到着。唯一の救いは、バスがはねる度に、申しわけなさそうにニコッと笑う車掌さんの笑顔だった。

帰りは帰りで、天文館界隈を徘徊する実験班負の姿。実験班の人間が高島屋の裏に「千福」という途轍もなくおいしいとんこつの店を見つけたのも、ブルートレイン時代の副産物である。昔は、時間を損しながら、数々の楽しみがあった。

今は、東京からのフライトが1時間半。空港からのドライブで2時間あれば着く。それでも「遠いなあ」と感じるのだから、人間の欲には限りがない。

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