第1章 日本の宇宙開発のはじまり

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科学者の風流

道川の実験場のテント内には小さな黒板がかかっていて、毎日その日の実験スケジュールや連絡事項が、こまごまと書かれていた。ある日、ここに俳句が書かれていて人目を惹いた。

     空高く想ひはるけし秋の海

作者は糸川で、彼はこの句に天地人の三才を詠んだ。この三位一体の協力がなければ、観測ロケットの成功は達成できない、という願望をこの句に寄せたものであった。

ベビーR型の1号機の時には、いつも糸川の愛用車を守っている方位神社のお守り札がロケットに乗せられて打ち上げられ、搭載カメラと一緒に回収された。海水に濡れたお守りを手のひらに乗せて、世界初の海上回収の喜びを語る糸川の写真が、翌日の新聞を飾ったことは言うまでもない。

科学の粋を集めたロケットの中に方位神社のお札を入れて飛ばす思い付きは、「神頼み」どころか、大事を前にしての余裕を示すもので、これぞ「科学者の風流」と断ずることができる。実は現在も、ミューロケットの打上げの前日には、実験主任は焼酎2本を引っ提げて発射場の近くの小さな観音さまに「お願い」に参じることになっているのである。

本部テント

本部テント

本部内の黒板

本部内の黒板

観音詣で平尾

内之浦の観音詣で

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