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ISASニュース

「あかり」データプロダクトの公開

No.423(2016年6月)掲載

 赤外線天文衛星「あかり」の観測データが新たに3種類、世界の天文学研究者に向けて公開されました。今回リリースされたのは「遠赤外線全天点源天体カタログVer.2」「近赤外線撮像データ」「近赤外線分光カタログ」の3種類です。

 遠赤外線天体カタログは、波長65、90、140、160マイクロメートルで観測した約50万天体のデータベースで、2010年3月に公開された初版に比べ、天体数が増加し、信頼性・精度も向上しています。他波長のデータと併せて天体の放射エネルギー分布の解析や、新しい性質の天体を見つけるなどの研究が期待されます。近赤外線(波長2-5マイクロメートル)のデータは地球の大気が邪魔をして観測できない波長の情報も含み、特に分光カタログはジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(2018年10月打上げ予定)が観測を開始するまで「あかり」の独壇場です。

 「あかり」は2006年2月に打ち上げられ、2011年11月に停波しました。「あかり」の観測データを、科学的解析ができるまでに処理・較正するのは、専用のソフトウェアとスキルが必要で、これがデータ利用に対する高いハードルとなっていました。我々は、2013年度から5年計画で、「あかり」データをエキスパートによって処理・較正し、一般研究者が科学的解析を行いやすい状態にして公開する作業を進めています。

 今回の公開は、世界中の研究者を対象にしていますが、データの説明文書が完全に整っていないため、随時データ作成チームからのフォローアップができるように「登録制」としています。今後速やかに解説文書を整備し、完全な公開とするべくチームは努力しています。また、今後も引き続き他のデータについても公開に向けて処理・較正を行っています。今後も「あかり」データにご注目ください。

「あかり」Webページ: http://www.ir.isas.jaxa.jp/AKARI/index-j.html

(山村 一誠)

「あかり」遠赤外線全天カタログに含まれる約50万天体の分布図。

「あかり」遠赤外線全天カタログに含まれる約50万天体の分布図。天の川(銀河面)が中央水平になるような座標系で示している。青〜赤になるほど、長波長側で明るくなっていることを示している。 [画像クリックで拡大]