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ISASニュース

ERG熱真空試験実施

No.423(2016年6月)掲載

 ジオスペース探査衛星ERGは2016年度の打上げに向けて、2015年10月から総合試験を進めており、2016年4月に試験のバトンがシステム熱真空試験に渡りました。熱真空試験ではシステムとして衛星を組み上げた状態で真空環境に曝し、機器が高温・低温環境に曝されても壊れないか、衛星の運用時に使用するコマンドに対して機器が正常に動作するか、事前に予測した温度と計測温度を比較して熱解析モデルに間違いがないか、許容される温度範囲に納まっているか確認することが目的です。試験は宇宙の真空・低温環境を模擬することのできる4mΦスペースチェンバーにて行い、軌道上の太陽光による熱入力は赤外線パネルを用いて模擬する方法で実施しました(写真は3段ある赤外線パネルのうちの1段目が取り付けられるところ。3段取り付けると衛星は鳥籠に入れられたような形態となる)。試験は5月5日〜19日の期間に行われ、プロジェクト、ミッション機器担当、担当メーカ、チェンバー運転メーカが一丸となって24時間フル稼働で取り組みました。

 いつもはがらんとしたチャンバー制御室が衛星の地上系の試験装置や外部電源などで埋まり、チェックアウト室にはミッション機器担当やサブシステムのみなさんが集結しました。限られた時間中に必要な確認やデータ取得を確実に行うために、事前に詳細に検討された試験手順に従って、昼夜問わず継続して試験を行いました。試験は、ERGが打上げから軌道上での運用で経験する各モードで行い、それぞれの環境にて電気的な確認や熱平衡データを取得しました。機器の高温化が危惧されるモードや、バッテリー容量が足りるかを確認するモードなど、モニタ画面に張り付いてはらはらしながら見守るような試験内容もありましたが、計画した全ての試験を無事に終えることができました。取得したデータをもとに、今後さらに解析や調整を進めていく予定です。

 打上げに向けてもう少し総合試験が続きます。ジオスペースへの打上げに向けて引き続きプロジェクトが一丸となって開発を進めてまいりますので応援をどうぞよろしくお願いいたします。

(柴野 靖子)

ERG 衛星の周囲を取り囲む熱入力模擬のための赤外線パネルを取り付けるところ。

ERG 衛星の周囲を取り囲む熱入力模擬のための赤外線パネルを取り付けるところ。 [画像クリックで拡大]