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ISASニュース

宇宙用冷凍機システム(CC-CTP)チーム発足

No.422(2016年5月)掲載

 CC-CTPは、無冷媒冷凍機でセンサを 50mKまで冷やす宇宙用冷凍機システムの開発を、ESA(欧州宇宙機関)の Core Technology Program(CTP)という開発研究に応募したフランスの CNES(フランス国立宇宙研究センター)および CEA(フランス原子力・代替エネルギー庁民生科学センター)と協力して3年間で行うものです。CCとは Cryo-Chainの略で、様々な冷凍機を組み合わせた冷凍機システムを意味します。日本からは、「あかり」、ASTRO-H、SMILESなどのこれまでの衛星や ISS実験で鍛えてきた、2段スターリング冷凍機 (※1)、4K級ジュールトムソン冷凍機 (※2)、1K級ジュールトムソン冷凍機を持ち込みます。そしてフランス側も赤外線天文台 Herschelの冷却系の開発経験などを生かし、共同で新たな極低温冷凍機であるクローズドサイクル希釈冷凍機 (※3)にも挑みます。50mKで働かせる超低雑音センサの需要は様々な波長帯の天文観測に共通であり、我々は少なくとも Athena(X線天文台)、SPICA(赤外線天文台)、LiteBIRD(マイクロ波背景放射観測)など 2020年代の様々な宇宙観測衛星を念頭においた、ミッション横断型の研究として開発を行い、3年後に実験室での実証を目指しています。

 メンバーは、宇宙研では山崎、満田、中川、坂東、さらに JAXAつくばの研究開発部門の超高性能観測チームとも密接な協力をしています。2015年12月に設置、2016年1月の計画審査を経て、実働を開始しました。

 2015年9月、2016年1月の2度、フランス側の来日、2015年10月は日本側の訪仏などの準備を経て、ESA側の Kick off meetingも4月4日に行われ、今年度中には、フランスでの組み込みが予定されるなど、計画は早いピッチで進んでおり、ポスドクなど若手の協力も得つつ活動を行っています。今後ともよろしくお願いします。

(山崎 典子)


冷凍機にも使う物理過程によっていろいろな種類があります(詳しくは ISASニュース2015年11月号(No.416) PDFファイルが開きますをご覧ください)。


(※1) スターリングエンジンは、熱を運動に変えますが、スターリング冷凍機はコンプレッサを動かして熱を奪います。絶対温度20K程度まで冷やせます。
(※2) ジュ−ルトムソン効果(理想気体では起きない熱力学過程)を使います。絶対温度4K、1K程度まで冷やせます。
(※3) ヘリウムの同位体を混合させて潜熱を奪い、冷却します。絶対温度で0.1K以下まで冷やせます。

2015年9月、フランス側のメンバーとの相談会

2015年9月、フランス側のメンバーとの相談会。共通語は英語です。