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ISASニュース

SLIMプロジェクト、始動

No.422(2016年5月)掲載

 小型月着陸実証機 SLIMは、2016年3月8日に実施されたプロジェクト移行審査とその後の承認プロセスを経て、4月1日より晴れてJAXAプロジェクトとして活動することになりました。

 SLIMは、日本として初めての月面軟着陸を、それも、これまでにない高い精度で狙った地点への着陸を行う小型の月着陸機です。これまでの月面軟着陸機がいずれも、数km〜10数km程度の精度で狙った地点に着陸していたのに比べて、SLIMでは 100m精度での「ピンポイント」着陸の実現を目指します。「かぐや」や LROなど近年の月周回機の成果により、飛躍的に高解像度な月面観測データが手に入ったことを受けて、これからの月探査ミッションでは、「あの辺り」ではなく「ここ」に、ピンポイントで着陸することが必要になってくることを見据えたものです。ピンポイント着陸を実現するためには、従来のような地上からのナビゲーションでは不十分で、探査機自体が月面に対する位置・速度を画像等から検出し、自律的に誘導・制御を行って着陸する技術が必要になります。SLIMが実証しようとしている技術の中心は、まさにこのための、ピンポイント着陸技術になります。

 SLIMは10年以上にわたる研究活動の成果として、2014年2月にイプシロン搭載宇宙科学ミッション公募に対して提案され、2015年6月のプロジェクト準備審査完了後は、プリプロジェクトチームとして活動してきました。その成果や検討結果を踏まえてプロジェクト化を果たすべく、技術審査であるシステム定義審査や、経営レベル審査であるプロジェクト移行審査に臨んだのですが…率直に言って、なかなか大変でした。「どうしてもここまでは検討・検証してから」という準備が整ったときには、審査プロセスを進めるために残された時間的余裕が少なくなっており、結果として、短期間の間に、多くの技術的な分科会を開催してシステム定義審査に臨み、また必要な確認を経てからプロジェクト移行審査を受審する必要があったためです。無事に予定どおりプロジェクト移行までたどり着けたのは、SLIMチーム員の努力ももちろんですが、丁寧かつ迅速に審査くださった審査員の方々、そしてそれを支援くださった事務局の皆様、多くの方々のご協力があってのことですので、心より感謝しています。

 おかげさまで無事に節目を迎えることはできましたが、実際の開発はこれから始まるという意味で、まだようやくスタート地点にたどり着いただけです。それでも桜の花の季節、新しいプロジェクトメンバーを迎え、プロジェクト部屋も手に入れて(本館6階です!)、いろいろな意味で“始動”の4月となりました。気持ちも新たに、開発を進めていきたいと考えています。

(坂井 真一郎)