宇宙航空研究開発機構 サイトマップ

TOP > レポート&コラム > ISASニュース > 連載の内容 > ISAS事情

ISASニュース

「あけぼの」プロジェクト終了

No.421(2016年4月)掲載

 磁気圏観測衛星「あけぼの」は、1989年の打上げ以降26年にわたり、地球を取り巻くプラズマ環境を観測し続けた。『ISASニュース』2015年6月号で紹介したように、軌道が経年変化し、また衛星機能が劣化したことから運用の停止を決定し、2015年4月23日に停波運用を実施した。その後、12月に宇宙理学委員会による終了審査、今年2月に所内の終了審査を終え、2015年度末をもって「あけぼの」プロジェクトを終了した。終了審査に向けて資料を作成するに当たり、宇宙理学委員会審査委員会の海老沢研委員長をはじめさまざまな方に有益なご示唆を頂いたことに、深く感謝している。

 終了審査の準備に並行し、26年間の運用記録の整理を進めた。「あけぼの」の運用は1週間を単位として行い、毎パスの運用手順書とは別に、週末にその週の運用で起きた問題や特記事項を「引き継ぎ書」としてまとめてきた。打上げ後間もない時期の引き継ぎ書は、「あけぼの」衛星運用の古典的バイブルである。10年ぶり20年ぶりに起きた問題の対処方法を初期の引き継ぎ書から見つけ出す、というようなこともあった。しかしこの引き継ぎ書は、打上げ後10年間は手書きであったし、その後もワープロ打ちはされていても電子的には記録が残っていない場合が多かった。すべてが電子ファイルとして保存されているのは2006年以降である。

 このたび運用記録の整理作業の一環として、紙の形でしか残っていない引き継ぎ書をスキャンし、さらに本文はあらためてワープロ入力して電子化した。四半世紀以上前につくられた衛星であるから、この運用記録が今後の衛星の運用に技術的な面で直接的に役に立つとは思わない。一方で運用記録の電子化には、データ取得の背景を明確にし、研究結果に運用条件が与える影響(バイアス)を評価できるようにしておくという重要性もある。

 26年もの間連続して磁気圏を観測する衛星は容易には出現せず、長期間の観測を必要とする研究は今後も「あけぼの」のデータによって進展するであろう。プロジェクトが終了しても、データや資料整理の残作業はまだしばらく続きそうである。

(松岡 彩子)

26年間の「あけぼの」衛星運用引き継ぎ書

26年間の「あけぼの」衛星運用引き継ぎ書