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ISASニュース

「たんぽぽ」実験の軌道上運用、回収試料初期分析の準備が進行中

No.419(2016年2月)掲載

 『ISASニュース』2015年7月号でご紹介した「たんぽぽ計画」では現在、国際宇宙ステーション(ISS)「きぼう」日本実験棟の船外実験プラットフォームにて「有機物・微生物の宇宙曝露と宇宙塵・微生物の捕集」実験を実施中です。

 シグナス補給船を搭載したアンタレスロケットの爆発事故(2014年10月)を契機に、簡易曝露実験装置(ExHAM)への「たんぽぽ」実験装置の取り付けは、分割・延長されることになりました。まず2015年5月26日、すべての曝露パネルと宇宙塵・スペースデブリ・地球起源エアロゾル用の捕集パネル8ユニットがExHAM 1号機へ搭載され、第一弾の曝露実験が始まりました。そして10月30日に油井亀美也宇宙飛行士が捕集パネル3ユニットをExHAM 2号機に取り付け、11月11日にロボットアームによって「きぼう」の船外実験プラットフォームへ設置され、第二弾の曝露実験を開始しました。曝露パネルと捕集パネルは、2016年半ば以降に米国スペースX社のドラゴン帰還カプセルなどを使って地球へ回収すべく、調整を進めています。

 2017年以降もパネル交換と地球帰還を毎年繰り返し、最終便の回収は2019年になる見込みです。

 また、昨年6月から年末までの間、曝露パネル内の極限環境微生物と模擬有機物試料が経験する最高・最低温度を記録すべく、ISS軌道面と太陽方向のなす角度の変化に応じてバイメタル温度計の目盛りをビデオ映像から読み取る「温度測定運用」も、断続的に行いました。初年度の同運用は12月29日に完了しました。その結果、微生物が死滅したり有機物が変性したりするほどの高温には一度も達していないことが確認できました。

 軌道上運用と並行して地上では、今年半ば以降に予定されているパネルの第一回地球帰還を目指して、回収試料の初期分析と汚染管理の準備も急ピッチで進んでいます。作業プロトコルの策定、各種分析装置の開発・試験・調整、クリーンルーム施設の整備、作業者の訓練、宇宙塵・微生物・スペースデブリなどの各サブテーマチームへ詳細分析用試料を配分するまでの全工程のリハーサルなどを、今年1月から半年間で完遂すべく、現在「たんぽぽ」チーム一丸となって活動中です。

(矢野 創)

「たんぽぽ」捕集パネルを取り付けたExHAM 2号機をエアロックへ送る油井亀美也飛行士

「たんぽぽ」捕集パネルを取り付けたExHAM 2号機をエアロックへ送る油井亀美也飛行士