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ISASニュース

観測ロケットS-310-44号機実験

No.419(2016年2月)掲載

 中緯度の電離圏下部(高度約100km付近)に存在するSq電流系と呼ばれる環状電流の中心付近では、プラズマの高温度領域がしばしば発生すると報告されています。この領域には、通常は南極や北極でしか見られないような高い高度から地球へ飛び込んでくる降下電子が存在し、それが電子の加熱という特異現象を引き起こす可能性が提唱されていますが、生成メカニズムの詳細はよく分かっていません。

 1月に行われた観測ロケットS-310-44号機実験のターゲットであるSq電流系は、主として中緯度地方に発生する現象であり、射場である内之浦の地の利を活かした実験であると言うことができます。このSq電流系中心の電子加熱現象を狙った観測としては、『ISASニュース』2007年2月号で阿部琢美先生が報告されているように、S-310-37号機実験があります。私はその実験に電場観測担当として参加しましたが、電場観測用として先端から先端までの長さが2mのセンサを使用したため、ロケット周辺のプラズマの影響を強く受け、電子加熱の原因と考えられている電場を観測することができませんでした。そこでS-310-44号機実験では、S-310-37号機に搭載されたセンサの倍の長さがある4mの新開発センサを搭載することになりました。

 S-310-44号機は、1回の延期の後、1月15日正午ちょうどに内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられました。打上げから67秒後にセンサの伸展が開始され、観測ロケットから送られてくるデータがS-310-37号機で得られたデータより明らかにノイズが少ないことが分かったときは、同行した学生と目を合わせて安堵しました。センサの伸展に関しては、相模原での噛合せ試験時から関係者にご迷惑をお掛けしましたが、無事伸展し観測データを得られたということで、許していただけるのではと思います。そのほかの科学観測機器のデータも正常に得られたので、今後JAXAや各大学において詳しい解析を行い、Sq電流系中心の電子加熱現象のメカニズム解明を目指します。

 噛合せ試験やフライトオペレーションにおいて、いろいろな事案がありましたが、協力して乗り越え、観測が成功しました。ここに、S-310-44号機観測ロケット実験班の皆さまにお礼を申し上げます。

(富山県立大学/石坂 圭吾)

S-310打上げ用ランチャーに搭載されたS-310-44号機とPI班(実験装置担当チーム)

S-310打上げ用ランチャーに搭載されたS-310-44号機とPI班(実験装置担当チーム)