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ISASニュース

強化型イプシロンロケット2段モータM-35真空地上燃焼試験

No.419(2016年2月)掲載

 2015年12月21日午前11時00分、能代ロケット実験場の真空燃焼試験棟において強化型イプシロンロケット2段モータM-35の真空地上燃焼試験(M-35-1 TVC)を実施しました。M-35は、強化型イプシロンの2段目用に新規に開発を進めている固体モータです。今回の試験は、性能データを取得して、設計の妥当性を確認することを目的としています。M-35の詳細は、『ISASニュース』2015年12月号(PDF: 3.5MB)をご覧ください。

 今回の試験は、これまでに例のない冬の真っただ中での実施となりました。能代ではこの時期、気温は0℃を下回り、雪が積もることもあります。燃焼試験中に真空槽内を真空に保つための拡散筒を冷却する水の供給設備が凍結する恐れがあるなど、冬季実施による課題が想定されていたため、2年も前から凍結対策など入念な準備を行いました。また、実験場の東側には民家などがあり、住民に迷惑を掛けないように、西風のときは燃焼試験を実施しないようにしています。しかし、この時期はめったに東風が吹かないという大きな懸念もありました。

 11月30日から本格的な準備作業を進め、現場で直面する課題にうまく対応して、燃焼試験予定日までに準備を完了しました。12月21日早朝、最も懸念された風向きは、奇跡的にも東風。迷うことなく試験準備を進める決断をしました。午前10時45分、点火までの準備が整いました。天候は曇り、気温6.5℃、東風2.5m/s。絶好の燃焼試験日和で、点火のGO判断を下しました。計画通り、午前11時ちょうどに点火させ、轟音とともに約140秒間安定して燃焼しました(表紙)。推力は約40tf(重量トン)。大成功でした。

 今回の成功は、JAXAやメーカーのスペシャリストを結集した実験チームや後方支援の方々が、目標に向かって一丸となって取り組んだ結果が実ったものです。本燃焼試験にご協力いただいた関係者の皆さまに深く感謝致します。今後、取得したデータを分析し、今年度中にM-35の開発を完了する予定です。

(実験主任 北川 幸樹)