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ISASニュース

観測ロケットS-310-44号機噛合せ試験

No.418(2016年1月)掲載

 電離圏Sq電流系中心に発生するプラズマ特異現象の解明を目指す観測ロケットS-310-44号機実験の噛合せ試験が、2015年12月初めからの約2週間、相模原キャンパスで行われました。Sq電流系とは、超高層大気の潮汐運動によるダイナモ作用によって電離圏下部に発生する大規模な渦電流のことです。大きなものは昼側の南北半球に各1個ずつ存在しますが、その中心には電子加熱やプラズマ密度擾乱をはじめとする特異な現象が存在しているという観測報告があり、その謎を解明することが本実験の目的です。

 本来であれば、観測ロケットの噛合せ試験は構造機能試験棟を中心にして行うのですが、今年はほかのプロジェクトが重要な試験に使用するため機械環境試験室を使用しました。機体やGSE(地上支援装置)の配置など、通常とは異なる使い勝手に実験班の方々は苦労されておりましたが、百戦錬磨の実験班員の努力により順調に作業は進められました。機器間の電磁的干渉など、“普通に”発生する問題は想定内でしたが、テレメータ立ち上げ時にフレームがロックしない事象が多発したことは予想外の不具合でした。当初は対症療法で作業を進めたものの根本的な対策が必要ということで、対象の機器を機体から下ろして原因追究・改修後に再組み付けを実施、当初予定より多少遅れたものの梱包作業まで無事終え、ひとまず胸をなで下ろしたところです。

 本実験で狙う現象の一つが、Sq電流系中心の電子加熱現象です。それに重要な役割を果たしていると考えられるのが電離圏中の電場なのですが、その測定のために今回は3対のダブルプローブをロケットから伸展します。写真は、プローブを伸展させた状態で機器間の電磁干渉チェックを行う様子を示しています。地上ではプローブが重力のためにたわんでしまうので、ひもで支えながらデータの確認を行いました。S-310-44号機には電場測定器に加え、電子エネルギー分布測定器、プラズマ波動測定器などが搭載されますが、特異現象解明のための見事なデータを取得してくれるものと、実験班員は楽しみにしています。

(阿部 琢美)

電場測定器のプローブを2対(矢印)伸展させ機器間の電磁干渉チェックを行っている様子

電場測定器のプローブを2対(矢印)伸展させ機器間の電磁干渉チェックを行っている様子