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ISASニュース

SPICAの新しいミッション定義承認

No.417(2015年12月)掲載

 次世代赤外線天文衛星SPICAの新しい計画が、ミッション定義審査委員会(JAXA宇宙研宇宙理学委員会が設置し、計画の意義・目的・目標を審査)により11月6日付で承認され、SPICA計画の概要が固まりました。

 SPICAの新しい科学目的は「Enrichment of the Universe with metal and dust, leading to the formation of habitable worlds」、すなわち「宇宙が重元素と星間塵により多様で豊かな世界になり、生命居住可能な惑星世界をもたらした過程」を解明することと定義されました(図)。この目的を達成するために、口径2.5mで極低温冷却されたスペース赤外線望遠鏡に、中間赤外線・遠赤外線帯の最新鋭の観測装置を搭載し、天文観測にとって最適な場所である第2ラグランジュ点軌道に投入して、極めて高い感度で銀河や星惑星形成天体などの観測を行います。これには、我が国のお家芸である宇宙空間での望遠鏡冷却技術と、日本と欧州の高度な望遠鏡・観測装置技術が活かされます。「あかり」や米国Spitzerの10倍の集光力で、JWST(ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡)にもALMA(アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計)にも観測できない中間赤外線・遠赤外線帯の高感度観測が実現できるため、極めて大きな研究成果が期待されます。

 約2年前に、従来のSPICA計画のままではプロジェクトとして成立しないことが明らかになりました。しかしながら、極低温冷却赤外線望遠鏡が天文学に果たす役割の重要性を再確認するとともに、日欧の多くの研究者と双方の宇宙機関が精力的に検討を続け、ようやく新しいSPICA計画を定めることができました。この間、科学目的の再定義、国際協力の枠組みと分担の変更、望遠鏡口径の縮小と観測装置の仕様変更・方式変更など、大幅な計画変更を行いました。その結果、従来より感度の向上が期待できるなど、より価値の高い、実現可能な計画になったと判断しています。

 今回のミッション定義審査合格は、新しいSPICAにとって重要な一歩です。次はESA(欧州宇宙機関)へのプロジェクト提案が控えています。日本国内外で参加・協力・支援していただいた多くのメンバー・研究者・コミュニティの方々の貢献・努力に感謝するとともに、さらに良いプロジェクトにして実現するために、今後も積極的な参加・支援をお願いいたします。

(SPICAチーム 芝井 広)

SPICAの科学目的

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