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ISASニュース

小型月着陸実証機SLIM のプリプロジェクト活動状況

No.417(2015年12月)掲載

 SLIMは、日本として初めての月面軟着陸を、それも、これまでにない高い精度のピンポイント着陸を行う小型の月着陸機です。これまで月面軟着陸を行った例は多くありますが、いずれも「だいたいあの辺り」と、着陸すべき場所から数km〜十数km程度の範囲に着陸できれば十分なミッションでした。ところが「かぐや」やNASA(アメリカ航空宇宙局)のLROなど近年の月周回機の成果により、従来と比べて飛躍的に高分解能な月面観測データが手に入ったことにより、状況は一変しました。今、科学的に月を研究している人も、何らかの月探査を検討している人も、分解能50cmの高解像度画像などを眺めています。ですから当然、これからのミッションでは、「あの辺り」ではなく「ここ」に、ピンポイントで着陸する技術が求められるようになってきます。ピンポイント着陸を月のような有重力天体で行うためには、従来の月着陸機のように地上から誘導してあげるのではなく、自分自身で対月面の位置・速度を把握しながら、自律的に着陸する技術が必要になります。このピンポイント着陸技術こそが、SLIMで実証しようとしている中核技術の一つです。

 SLIMは、10年以上にわたる研究活動の成果として、2014年2月にイプシロンロケット搭載宇宙科学ミッション公募に対して提案されたものです。その後、宇宙研内での選考や審査、2015年6月のプロジェクト準備審査などを経て、正式にJAXAプリプロジェクトとして認められました。現在は、SLIMをどのようなシステムとして開発するのか、細部にわたって定義する“概念設計”という作業を進めています。これが完了し、無事にプロジェクトへのフェーズアップが認められると、いよいよ本格的なものづくりも始まっていきます。その様子などは、適時また『ISASニュース』でもお伝えしていきたいと思います。

 SLIMはおかげさまで、その小さな姿に似つかわしくないほど大きな関心を、各方面から頂いているように感じています。今後の日本の月惑星探査のためにも失敗の許されないミッションであり、身を引き締めてまい進してまいりますので、ぜひご支援・ご指導をよろしくお願い致します。

(坂井真一郎)

月面に着陸したSLIMの想像イラスト

月面に着陸したSLIMの想像イラスト