宇宙航空研究開発機構 サイトマップ

TOP > レポート&コラム > ISASニュース > 連載の内容 > ISAS事情

ISASニュース

第9回「ひので科学会議」開催

No.416(2015年11月)掲載

 第9回「ひので科学会議」(Hinode 9)が9月14日から17日にかけて行われました。開催地は豪華客船タイタニックを建造した造船所を持つ、イギリス北アイルランドのベルファスト。口頭発表72件、ポスター発表84件、参加者約200名に及んだ今回の会議は、ベルファスト郊外のクイーンズ大学Riddleホールで催されました。少々手狭であった部屋が逆に参加者の一体感を高める中、松浦博司 在英国日本国大使館経済公使による祝辞が述べられ会議がスタートしました。

 太陽観測衛星「ひので」は2006年に観測を開始して以来、成果を挙げ続けています。「ひので」の観測データを用いて出版された査読論文は、今では950件を超えています。2013年には100件、2014年には97件の論文が出版されており、「ひので」の科学的な重要性は、いまだに衰えを見せていません。また、これまで国内外を含め多くの博士論文において用いられてきた「ひので」のデータは、人材育成の観点からも科学の進展に貢献し続けています。

 今回の科学会議では、地上望遠鏡やほかの衛星と「ひので」のデータを組み合わせて太陽フレアを解析した発表が増してきたように感じました。太陽極小期に打ち上げられた「ひので」は、異常に長い極小期を経て最近ようやく極大期を迎えたことから、太陽研究の醍醐味ともいえるフレア活動を頻繁に観測できるようになりました。また、SDOやIRISといった衛星観測、SSTやNSTといった地上望遠鏡との共同観測は、もはや必須のものとなっています。そしてロケット観測により完璧なデータを届けてくれたCLASPが、彩層磁場観測への期待を高めてくれたことも印象的でした。

 「ひので科学会議」に引き続き、9月18日には次期太陽観測衛星SOLAR-Cの科学会議が開催され、SOLAR-Cの目指すサイエンスおよび搭載機器の先鋭化について議論が交わされました。特に、偏光観測を行い彩層磁場の測定を目指すSOLAR-C/SUVITと地上の大口径望遠鏡DKISTの共働について、目指すべきサイエンスの観点から活発な意見交換がありました。戦略的中型2号機へ向けて、SOLAR-Cの目指すべきサイエンスをよりいっそう明確にしていく必要があるように感じました。

(松本 琢磨)

9月15日にタイタニック・ベルファストで行われたバンケットでの集合写真

9月15日にタイタニック・ベルファストで行われたバンケットでの集合写真