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ISASニュース

X線天文衛星ASTRO-H 正弦波振動試験

No.416(2015年11月)掲載

 8月29日から10月2日にかけて、X線天文衛星ASTRO-Hの正弦波振動試験が、筑波宇宙センター大型振動試験設備で実施されました。正弦波振動試験は、衛星構造の動特性評価と、打上げ時相当の振動荷重を負荷することによる強度評価という二つの大きな目的があります。

 動特性評価のために衛星構造の各部に加速度計を取り付けますが、その数は100を優に超えます。そのため加速度計の配線の数も膨大となり、それらの合理的な引き回し、適切な結線が必要になります。これらの作業はすべて人の手によって行われるため、間違いが発生しないように細心の注意をもって実施されました。こういった一つ一つの正確な作業の積み重ねによって、システムの試験は成り立っています。

 打上げ時にはいろいろな方向に振動が加わるのですが、試験は1軸ずつ合計三つの軸方向に対して振動を加えていきます。各軸の振動試験時には、構造の動特性を評価しながら、入力レベルを段階的に上げていきます。最大レベルの印加時には、衛星の電気系を立ち上げた状態(打上げ時と同じ)で行うため、機械系のメンバーだけでなく電気系のメンバーも含めた大所帯での試験となります。試験時にはメンバーの所在場所も、衛星状態をモニタするチェックアウト室、制御コマンドを送信する組み立て準備室、加振制御を行う振動制御室、衛星がある振動試験室などなど複数箇所に分かれましたが、音声と映像をつなぐシステムを整え、お互い情報を共有しつつ試験を円滑に進めることができました。

 10月2日に最後の軸の正弦波振動試験を終えて、予定通り動特性評価のためのデータの取得と、打上げ時相当の振動荷重に対する衛星主構造の強度検証ができました。これで、ASTRO-Hとしては一つの山を越えたことになります。機械的な試験としては、振動試験前後のアライメント変動の評価試験と伸展トラスの伸展機能確認試験を残すのみとなりました。現在はその評価試験に向け、着々と準備が進められています。

(佐藤 理江、石村 康生)

振動試験室の水平加振台に載せられたASTRO-H

振動試験室の水平加振台に載せられたASTRO-H