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ISASニュース

観測ロケットS-520-30号機の打上げ成功

No.415(2015年10月)掲載

 酸化物系宇宙ダストの核生成過程の解明を目的として、観測ロケットS-520-30号機が9月11日20時にJAXA内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられました。ロケットの飛翔および搭載機器の動作は正常で、打上げ283秒後に最高到達高度312kmに達した後、打上げ550秒後に内之浦南東海上に落下して実験が計画通り終了しました。その飛行中に、搭載した小型姿勢制御装置により約7分間の微小重力環境が得られました。

 本飛行では、微小重力環境を利用して、地球やそのほかの太陽系天体の材料となった微粒子がつくられる初期状態の再現実験(研究代表者:北海道大学 木村勇気准教授)を実施しました。具体的には、宇宙空間を模した3台の小型チャンバー内でそれぞれアルミナ(酸化アルミニウム)とシリカ(酸化シリコン)をヒーター加熱により蒸発させ、その後凝縮により固体微粒子が微小重力環境下で生成し成長する過程を直接測定しました。測定には2台の二波長干渉計および1台の浮遊ダスト赤外線スペクトルその場測定装置が用いられ、上記チャンバーはそれらに1台ずつ組み込まれました。

 二波長干渉計を用いた実験では、物理定数である酸化物の吸着係数と表面自由エネルギーを精度よく決定してアルミナとシリカそれぞれの核生成の起こりやすさを求め、天体より放出されたガスから最初に核生成する粒子がアルミナであるか否かを検証します。浮遊ダスト赤外線スペクトルその場測定装置を用いた実験では、アルミナが核生成して浮遊しさらに大きな粒子へと成長する過程において赤外線吸収スペクトル測定を行い、天体のスペクトル観測でのみ現れる13μm帯ピークがアルミナに由来するか否かを明らかにします。従前はこのような直接観測装置がなく、地上でダストの候補物質を媒質(臭化カリウム)に埋め込んで赤外線吸収スペクトルを測定していたために、測定データが埋め込みによる凝集や表面構造の変化などの影響を受けていました。

 本実験は宇宙研の宇宙環境利用科学委員会が支援したワーキンググループ・研究チームの活動の一環として計画・推進され、参加研究機関は北海道大学、東京大学、東海大学、JAXAでした。今後、各研究機関において得られたフライトデータの詳細解析が実施される予定です。なお、関係者各位のご尽力に加え長坪観音様の霊験もあってか、打上げ当日の天候にも恵まれてフライトオペレーションが予定通り無事終了しました。関係各位に深く感謝致します。

(稲富 裕光)

観測ロケットS-520-30号機の打上げ

観測ロケットS-520-30号機の打上げ