宇宙航空研究開発機構 サイトマップ

TOP > レポート&コラム > ISASニュース > 連載の内容 > ISAS事情

ISASニュース

太陽観測ロケット実験CLASPの打上げ成功

No.415(2015年10月)掲載

 日本時間9月4日午前2時1分(米国山岳部夏時間9月3日午前11時1分)、宇宙研、国立天文台、NASAをはじめとする国際チームは、太陽観測ロケット実験CLASP(Chromospheric Lyman-Alpha SpectroPolarimeter)を、米国ニューメキシコ州ホワイトサンズ・ロケット発射場より打ち上げました。CLASPは、真空紫外線であるライマンα光の偏光分光観測により、太陽大気の磁場を測定する国際共同実験です。

 太陽では、磁場をエネルギー源として大小さまざまなエネルギー解放現象が発生していることが知られています。太陽の磁場を測定することは、太陽の物理状態をより正確に知り、太陽で起こっている現象を理解するために不可欠です。これまで、太陽観測衛星「ひので」をはじめとする観測機器により、太陽表面(光球)や、太陽大気のうちでも比較的下層に当たる彩層下部の磁場の測定が行われてきました。CLASPでは、太陽ライマンα光の初めての偏光分光観測により、より上層である彩層上部・遷移層におけるベクトル磁場の測定を行います。

 CLASPでの偏光観測は、望遠鏡で集光した太陽ライマンα光の直線偏光の向きを、連続回転する波長板により時間変化させることで実現しています。波長板を連続回転させる機構には、宇宙研がメーカーと共同で次期太陽観測衛星SOLAR-Cに向けて開発した、高精度のモーターを使用しています。また、日本で組み立てられた観測装置は、今年4月に相模原キャンパスで振動試験を行ってから米国に出荷されました。

 CLASPは打上げに成功し、波長板モーターを含め観測機器は予定通りに動作して、観測は成功しました。観測ロケットは飛翔時間が短く、観測が行える時間は5分程度に限られていますが、5分間データが途切れることなくロケット姿勢安定性も申し分ない、極めて良質な観測データを得ることができました。近いうちに多数の科学成果を発表することを目指し、現在チーム全体でデータ解析に取り組んでいます。

(石川 真之介)

CLASP観測機器の写真(中身が透けて見えるように加工した合成写真)と光学系の概念図

CLASP観測機器の写真(中身が透けて見えるように加工した合成写真)と光学系の概念図