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ISASニュース

全天X線監視装置MAXI運用延長

No.413(2015年8月)掲載

 国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」曝露部に搭載されている全天X線監視装置MAXIの2018年3月末までの運用延長がJAXAで承認されたことを報告させていただきます。

 MAXIは2009年8月に運用を開始し、ガス比例計数管とCCDカメラを用いて0.7〜30keV領域の観測を続けてきました。これまで芯線切れやデブリが原因と考えられるガス圧低下などの不具合もありましたが、冗長系対応などを行うことで、現在も全天モニターを継続中です。

 MAXIはこれまで、新たなブラックホール連星をほぼ毎年1個の割合で発見するなど新天体の発見、潮汐力による星の破壊現象や古典新星の点火の瞬間などまれな現象の発見、既知天体の突発現象の速報、星の巨大フレアの多数の検出、ガンマ線バーストの速報、活動銀河核の活動のモニター、全天のX線源のカタログ作成、大規模に広がった軟X線放射の撮像分光などの成果を挙げてきました。

 JAXA(当時はNASDA)、理化学研究所、大阪大学の3機関でプロジェクトを開始したMAXIですが、現在では国内12機関が運用に参加しています。MAXIは現在、世界で唯一の全天X線監視装置であり、ホームページ(maxi.riken.jp)において、X線源の光度曲線、全天X線画像を公開し、随時更新しています。さらに、任意の天体に対して光度曲線、スペクトルのオンデマンド解析を行うことができます。速報は、ATEL(astronomerstelegram.org)またはGCN(gcn.gsfc.nasa.gov)、および専用メーリングリスト(maxi.riken.jpにて登録)へ配信しています。

 今回の観測延長によりMAXIは、2015年6月に発生したブラックホール連星V404 Cygの20数年ぶりの増光をいち早く検知・報告することができました。MAXIによるATELへの第一報以降、60件を超える追観測が報告されています。今回の延長審査に当たって支持の声を寄せてくださった皆さまに深く感謝致します。今後3年間、MAXIチームはさらに緊張感を持って運用していく覚悟です。

 これまでは日本のX線天文衛星「すざく」や海外のSwift衛星などと連携観測を行ってきましたが、今後は2015年夏にMAXIと同じ「きぼう」曝露部で観測開始予定のCALETミッション(ガンマ線バーストモニタを搭載)や、2015年度末打上げ予定の日本のX線天文衛星ASTRO-Hとの連携観測も期待されます。延長観測によりさらに成果を挙げ、また観測データの公開・突発現象の速報によって天文学・宇宙物理学コミュニティーに貢献していきます。皆さんのご理解、ご協力をお願いします。

(上野 史郎)