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ISASニュース

観測ロケットS-520-30号機噛合せ試験

No.413(2015年8月)掲載

 9月中旬に打上げ予定の観測ロケットS-520-30号機の噛合せ試験が7月2日から相模原キャンパスにおいて始まりました。

 今回の観測ロケット実験は、「酸化物系宇宙ダストの核生成過程の解明」です。天体より放出されたガスから最初に核生成する物質は、その後のダスト(微粒子)から天体に至る進化に非常に大きな影響を与えます。そのため、最初に核生成する物質の同定と生成条件の理解は、宇宙の物質循環を知る上で根幹となります。その物質の最有力候補がアルミナ(酸化アルミニウム)とされていますが、地上実験では確定できていません。そこで本実験では、ロケットの弾道飛行による数分間の微小重力環境を利用して、密閉容器の中でアルミナやシリカ(二酸化ケイ素)を無対流状態にて蒸発させ、その後に酸化物粒子が生成、成長する過程を直接測定することで、その生成条件を理解し、最初に核生成する物質の同定を目指します。アルミナに由来することが明らかになると、次世代赤外線天文衛星SPICAによる宇宙史の中での物質進化の解明に生かすことが期待されます。そのため、弾道飛行中に以下の2種類の実験を実施します。

(1)二波長干渉計を用いた実験:アルミナとシリカそれぞれの核生成の起こりやすさを定量的に求めます。シリカは、最も豊富に存在する無機ダストが核生成する際の鍵とされています。

(2)浮遊ダスト赤外線スペクトルその場測定装置を用いた実験:アルミナが核生成してさらに大きな粒子へと成長する過程において赤外線スペクトル測定を行い、天体のスペクトル観測でのみ現れる13マイクロメートル帯ピークがアルミナに由来するか否かを明らかにします。

 噛合せ試験は、構造機能試験棟への搬入に始まり、搭載装置の机上噛合せおよびロケット頭胴部への組み込み、動作チェックを終えました。現在、飛翔体環境試験棟にて、頭胴部の機械環境試験が順調に進められています。

(稲富 裕光)

観測ロケットS-520-30号機噛合せ試験の様子

観測ロケットS-520-30号機噛合せ試験の様子