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ISASニュース

第34回宇宙線国際会議O'Ceallaigh Medal(オキャレイ メダル)、西村純先生に授与

No.412(2015年7月)掲載

 1947年以来、第34回を迎える宇宙線国際会議(ICRC)において、元宇宙研所長の西村純先生がO'Ceallaigh Medalを授与されることが決まりました。ICRCは、国際純 粋・応用物理学連合(IUPAP)のコミッションC4によって主催されている国際会議の一つです。本メダルは1999年以来、“outstanding contributions to cosmic ray physics”に該当する研究者に贈られ、これまでの8名の受賞者の中にはノーベル賞を受賞しているV. L. Ginzburgなどの名も見られます。

 西村先生の受賞理由として挙げられる宇宙線関連分野の業績は数多くありますが、その中でも(1)3次元電子シャワー理論(N-K関数)、(2)中間子多重発生における二次粒子横運動量の一定則、(3)エマルションチェンバーによる中間子多重発生の気球実験、(4)高エネルギー一次宇宙線の気球観測、そのほか宇宙科学関連の観測・研究が、歴史的な意義を持つものです。特筆すべき点は、これらの実験に必要な大気球観測を日本において立ち上げ、南極周回気球を含む先駆的な気球観測システムを提案・開発し、数多くの気球実験を達成されたことにあります。

 西村先生のライフワークともいうべき高エネルギー一次電子の研究は、筆者らが先生のご指導で開始した気球実験から、国際宇宙ステーションの「きぼう」日本実験棟に搭載するCalorimetric Electron Telescope(CALET)に大きく飛躍する時機にあります。西村先生はすでに米寿を迎えられているとはいえ、なお活発に研究活動を行っておられ、今回の受賞は日本の宇宙線研究者にとっても大きな励みとなるに違いありません。

(早稲田大学理工学研究所 教授 鳥居祥二)

左:ゴム気球水平浮遊用特殊排気弁のテスト実験での西村純先生。1968年7月、福島県原町。
右:シンチファイバーを用いた電子観測器(BETS、CALETの前身)気球実験の様子。1998年5月、岩手県・三陸大気球観測所。

左:ゴム気球水平浮遊用特殊排気弁のテスト実験での西村純先生。1968年7月、福島県原町。
右:シンチファイバーを用いた電子観測器(BETS、CALETの前身)気球実験の様子。1998年5月、岩手県・三陸大気球観測所。