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ISASニュース

「きぼう」曝露部で「たんぽぽ計画」初年度曝露実験開始

No.412(2015年7月)掲載

 日本初のアストロバイオロジー宇宙実験「たんぽぽ計画」が始まりました。

 本計画は、綿毛が風に乗って新天地へ種をまいていく花をイメージして名付けられました。地球生命の材料となる有機物を含む宇宙塵の地球への到達と、地球生命の惑星間移動の可能性の両方を、地球周回の低軌道で検証することを目的としています。固体微粒子の捕集実験と極限環境微生物や模擬有機物の曝露実験を組み合わせ、全国26の大学・研究機関が回収試料を分析して、6つのサブテーマを探求します。

 捕集実験では、独自開発した0.01g/cm3という極低密度のシリカエアロゲル(※)を用いて、有機物含有宇宙塵、低軌道まで到達するかもしれない大気粉塵、微小スペースデブリの非破壊捕集に挑みます。エアロゲルは3年間毎年交換し、地球へ回収されます。曝露実験では、宇宙線や紫外線に耐性を示すデイノコッカス属細菌などの微生物を1〜3年間宇宙空間に曝露し、年単位で各種の生存率を定量評価します。

 3年分の実験装置一式は、米国スペースX社の無人補給船ドラゴン6号機に搭載され、4月15日にファルコン9ロケットで打ち上げられました。補給船は4月17日に国際宇宙ステーション(ISS)へドッキングし、5月14日には与圧部内で初年度分の実験装置が簡易曝露実験装置(ExHAM)1号機に取り付けられ、5月26日にエアロック経由で「きぼう」日本実験棟の曝露部へ設置されました。6月からはバイメタル温度計の運用を開始しています。また来年の第1回地球帰還に備え、初期分析装置の製作も宇宙研の宇宙生命・物質科学実験室にて進めています。

 「たんぽぽ計画」は2007年に、JAXA宇宙環境利用センター(当時)の曝露部第2期利用公募で選抜されました。その後、宇宙研の宇宙環境利用科学委員会ワーキンググループとして検討を深め、現在はJAXA有人宇宙技術部門と東京薬科大学(代表:山岸明彦教授)の共同研究、宇宙研の大学共同利用システムとして推進中です。

※エアロゲル:超臨界乾燥で溶媒を気体に置き換えた多孔質、低密度の固体。

(矢野 創)

「たんぽぽ計画」の捕集パネルが搭載されたExHAM 1号機を「きぼう」曝露部に設置

「たんぽぽ計画」の捕集パネルが搭載されたExHAM 1号機を「きぼう」曝露部に設置 © JAXA, NASA