宇宙航空研究開発機構 サイトマップ

TOP > レポート&コラム > ISASニュース > 連載の内容 > ISAS事情

ISASニュース

EarthCARE搭載 雲プロファイリングレーダの主反射鏡ベーキング試験

No.411(2015年6月)掲載

 EarthCARE(雲エアロゾル放射ミッション)は、JAXAとESA(欧州宇宙機関)が協力して開発を進めている地球観測衛星です。搭載する4種類のセンサ(雲プロファイリングレーダ、大気ライダー、多波長イメージャ、広帯域放射収支計)により、気候変動予測の主な誤差要因となっている雲やエアロゾルの全球観測を行うことで、気候変動予測の精度の向上に貢献します。JAXAは、雲プロファイリングレーダ(CPR)の開発を担当しており、現在はプロトフライトモデルの製作を完了し、プロトフライト試験を開始したところです。CPRはプロトフライト試験完了後にESAへ引き渡し、欧州において衛星システムとの組み合わせ試験を実施します。EarthCAREは、ソユーズロケットで打ち上げられる予定です。

 このたびEarthCARE/CPRプロジェクトでは、宇宙研のスペースチャンバを用いて、CPRの主反射鏡のベーキング試験を行いました。宇宙機を構成する部材からは、宇宙空間のような真空中でさまざまなガス(アウトガス)が放出されます。ベーキング試験とは、宇宙機を地上であらかじめ真空・高温環境に長時間さらし、このアウトガスを出し切るために行う試験です。EarthCARE搭載センサのうち、特に大気ライダーはアクティブな光学センサであるため、アウトガスによる汚染に敏感です。光学センサが汚染されてしまうと、機器の機能・性能を劣化させてしまう恐れがあります。

 今回、主反射鏡のベーキング試験を完了したことで、衛星システムとの組み合わせ試験や宇宙空間において、CPRから放出されるアウトガスが光学センサを汚染してしまうリスクを低減しました。なお、主反射鏡以外は、別途コンポーネントごとに必要なベーキング試験を実施済みです。

 CPRの主反射鏡は直径2.5mと大型であり、かつベーキングのための温度調節に技術的課題がありました。しかし宇宙研のスペースチャンバは、これらの課題を克服する機能・性能が備わっていたため、無事にベーキング試験を完了することができました。関係各位のご協力に深く感謝致します。

(丸山 健太/関 義広)

ベーキング試験直後の雲プロファイリングレーダ(CPR)の主反射鏡

ベーキング試験直後の雲プロファイリングレーダ(CPR)の主反射鏡