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ISASニュース

ペンシルロケット60周年

No.410(2015年5月)掲載

 ペンシルロケット50周年のイベントをやったのがもう10年前だった、と知ったのが国分寺市の皆さんから「60周年記念事業を」と声を掛けられてのことで、うかつとはいえ少々情けない想いです。50周年のときは、エクスプローラ50年とかガガーリン50年などいろいろな宇宙関連50周年があり、「それらに負けないような糸川ペンシル再現実験を」ということで、当時まだ若かった徳留真一郎先生、羽生宏人先生をリーダーに、JAXAの新人を中心に集めて若手のプラクティスも兼ね、幕張メッセの展示ホールで再現実験をやりました。

 そして、今回の60周年。最初にペンシルロケットの発射実験が行われた国分寺市の皆さんからの声掛けが発端ではありましたが、やる限りは大々的にと、また再現実験も考えたのですが、会場の都合や準備期間などから、これは断念。存命のペンシル関係者による証言から始めて、それが今ではイプシロンロケットへという流れの講演会と、ペンシル糸川、小惑星イトカワ、「はやぶさ」……という流れでペンシルの拓いた道がこうやって花開きましたという展示を見ていただくのがよいのではないかと考え、宇宙研として国分寺の皆さんと共催させていただくこととしました。

 4月12日に早稲田実業学校で開催した記念講演会では、当時を知る秋葉鐐二郎先生、垣見恒男さん、山本芳孝さん、的川泰宣先生など時の証言者たちの話に、満席の会場は60年前にタイムスリップしたようでした。最後にイプシロンの森田泰弘先生が、過去から未来へのバトンがうまく渡ったと話され、客席も大満足の様子でした。「ペンシルロケット60年目の待ち合わせin国分寺」と題した企画展は、国分寺市本多公民館で4月11日から19日まで開催しました。ペンシルロケットの実機17機の展示数は過去最大規模で、小惑星イトカワの微粒子と「はやぶさ」帰還カプセルの同時展示は初めてでした。4000人以上の方々に来場いただき、60年たっても地元の皆さんに支えられて引き継がれていくのだと強く思いました。

 さて、50年、60年……、100年。50と60の間の10年は何か物事が進んだか? 次の10年はどうか? さらに次の50年は、それまでの50年以上に我々は世の中を前に進められるだろうか? 実際に関わった人や当時を知る人がいなくなる中で、物事をどのように引き継ぐべきか? など、いろいろなことを考えさせられます。少なくとも、今の若い人や、今はまだいないがこれからこの世界に入ってくるであろう、次やその次の世代の人たちが、ペンシルから始めたパイオニアリングなマインドを引き継いだ人々や環境の中で仕事ができていて、それが続くような仕掛けをしておかなければならない、と考える機会ではありました。ペンシルのバトンタッチでしょうか?

 いずれにせよ、盛況に終わったイベントでした。国分寺の皆さまをはじめ多くの方々のご協力にお礼を申し上げます。

(稲谷 芳文)

展示されたペンシルロケット

展示されたペンシルロケット