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ISASニュース

「あかり」が見せる宇宙の姿
〜 近・中間赤外線画像データ公開 〜

No.410(2015年5月)掲載

 ここにお見せする2枚の天体画像は、赤外線天文衛星「あかり」で得られたものです。3種類の赤外線波長の観測データを、赤・緑・青に割り当てて疑似カラー合成しました。左の画像は、渦巻き銀河。青く見えているのは星、緑や赤は星間空間に漂うダストの放つ赤外線です。銀河を構成する星と、それをつくる原料であるガスやダストの分布の関係を描き出しています。また、右の画像では、生まれたばかりの星(中央)から渦を巻いて飛び出すジェットの様子が見えています。

 「あかり」は、全天をくまなくスキャンするサーベイ観測のほかに、望遠鏡を特定の方向に向けて、狙った天体を詳しく見る指向観測を行いました。そのうち近・中間赤外線カメラ(IRC)で撮影した天体の、処理・較正済み画像データが、3月末に世界中の天文学研究者に向けて公開されました。液体ヘリウムで観測装置を冷却していた時期の、約4000回の観測、計1万9000枚の画像データです。

 「あかり」の指向観測は研究者からの観測提案に基づいて行われました。これまでは、生データをダウンロードして、プロジェクトが提供する解析ソフトを用いて各研究者がデータ処理を行っていました。これだと、観測提案者は自分のデータなので頑張って解析をしますが、それ以外の研究者は解析の手間がバリアとなって、せっかくのデータもなかなか使ってもらえません。そこで、あらかじめ均一な処理を施し、すぐに研究に利用できるデータにしてから公開しようというのが、現在「あかり」チームが行っていることです。さまざまな研究目的で得られたさまざまな天体のデータから、元の観測提案者が思いもよらなかった研究が展開されることを願っています。本データの作成は、江草芙実 研究員(4月より国立天文台に異動)を中心に行われました。

(山村 一誠)

「あかり」近・中間赤外線カメラで撮影した天体の疑似カラー赤外線画像

「あかり」近・中間赤外線カメラで撮影した天体の疑似カラー赤外線画像
左:渦巻き銀河NGC 6949(青:3μm、緑:7μm、赤:15μm)
右:生まれたての星HH 999-IRSから飛び出すジェット(青:3μm、緑:4μm、赤:7μm)