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ISASニュース

遠くて近い国との国際共同ミッション

No.408(2015年3月)掲載

 ノルウェーは、日本から8000km以上も離れているが、捕鯨国、水産資源が豊富、国土面積がほぼ同じなど共通点が多く、皇室と王室が良好な関係にあるなど、実はなじみの深い国である。日本は欧州の多くの国と科学技術協力協定を以前から締結しているが、なぜかノルウェーと協定はなく、やっと2003年5月に締結されたと聞く。それ以来、友好関係がより深まった。

 そのノルウェーから、極域での観測ロケット実験を国際共同ミッションとして進めたいとの勧誘があった。ターゲットは極地方のカスプと呼ばれる領域に発生するプラズマイレギュラリティ(不規則構造)で、ICI(Investigation of Cusp Irregularity)というキャンペーン名称が付けられた。この現象は短波帯電波の後方散乱の原因になったり、GPS電波を用いた測位の誤差要因になったりする至極厄介な代物である。現象の空間スケールは約10mと予想されるが、何が起源でどのようにイレギュラリティに発達し、準定常的に継続して存在するのかが理解されていない。地上観測や衛星観測では限界があるため、ICIではロケットを現象目がけて打ち上げ、問題の解明を目指す。主任研究者であるオスロ大学Moen教授からは、低エネルギー電子測定器と電子密度擾乱測定器の提供を日本から受け、共同で解析を進め実験目的の達成を目指したいと打診があった。

 本キャンペーンは2012年4月にキックオフ会合、その後、機体の設計会議、第1次・第2次噛合せ、総合試験と首尾よく進んだ。しかし、好事魔多し。打上げオペレーション開始の1ヶ月前に使用するものと同型のロケットモータが不具合を発生し、2013年11月に予定していた我々のキャンペーンも延期になった。その後、不具合対策が施され、2015年2月現在、ノルウェーのアンドーヤロケットセンターにて打上げオペレーションが行われている。結果については終了後に別途報告を行う予定である。

(阿部 琢美)

ランチャーにつり下げられ打上げを待つICIロケット。バレンタインデーが近く、リボンが巻かれている。

ランチャーにつり下げられ打上げを待つICIロケット。バレンタインデーが近く、リボンが巻かれている。