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ISASニュース

ERGミッション部総合試験

No.408(2015年3月)掲載

 ジオスペース探査衛星(ERG)は、地球周辺に存在するヴァン・アレン帯の高エネルギー電子のダイナミックな変動メカニズムを明らかにすることを目的とします。この目的を達成するため、ヴァン・アレン帯の厳しい放射線環境下で高エネルギー電子が生まれる現場を観測することを目指して、衛星開発を進めています。

 ERGは、小型標準バスを利用したシステムバス部と、ミッション部から構成されます。ERGに搭載される9種の観測装置はすべてミッション部に組み込まれます。昨年11月から、相模原キャンパスの飛翔体環境試験棟(C棟)にある旧クリーンルーム内でミッション部の総合試験を実施しています。この試験の目的は、衛星全体の一次噛合せ試験実施前に、搭載観測機器を含むミッション部としての機械的・電気的噛合せ試験、機能試験を行うことにあります。

 ERGの特徴として、波動・粒子相互作用解析器(WPIA)という、プラズマ波動観測器からの電磁場変動の波形ベクトルとプラズマ粒子観測器が観測する電子一つ一つの速度ベクトルの相関解析を衛星機上で行う装置があります。これは、衛星─地上間の通信回線の制約によってすべての情報を地上に伝送することができない代わりに、軌道上でデータ解析を行い、その結果を地上に伝送するというとても挑戦的な装置です。このデータ処理を実現するためには、複数の観測機器からの大量のデータを一時的に蓄積する大容量データレコーダ、大量データを処理するミッション・データ処理装置、これらを結合してリアルタイム・データ伝送を実現するネットワークシステムが必要です。ミッション部総合試験は、初めてこれらのすべてを結合した試験となります。ミッション部総合試験を一次噛合せ試験の前に行い、これらの機能を確認することは、挑戦的な観測を確実に実現するための開発上の重要なマイルストーンです。

 試験は、2月中旬までに前半を完了し、FM(フライトモデル)構体パネルに搭載機器の組み付けを行った後、後半の試験を進めています。写真はミッション部の仮組みを行った際に撮影されたものです。現在までのところ試験は順調に進んでいます。2015年度には、システムバス部が合流し、ミッション部と共に一次噛合せ試験が開始される予定です。

(篠原 育)

FM構体パネルに搭載機器を組み付け、仮組みされたミッション部。

FM構体パネルに搭載機器を組み付け、仮組みされたミッション部。