宇宙航空研究開発機構 サイトマップ

TOP > レポート&コラム > ISASニュース > 連載の内容 > ISAS事情

ISASニュース

齋藤義文 准教授に井上学術賞

No.406(2015年1月)掲載

 ──太陽系科学研究系の齋藤義文准教授が、自然科学の基礎的研究で顕著な業績を挙げた研究者に贈られる井上科学振興財団の「井上学術賞」を受賞されました。受賞に当たっては、プラズマ粒子観測をしてきたことが評価されました。

齋藤:太陽系に広がる宇宙空間は、ガスの構成粒子が電子とイオンに分かれて運動するプラズマガスで満たされています。これらのプラズマ粒子の源は、太陽から流れ出す太陽風や太陽系天体から放出された物質です。私たちはプラズマ粒子を宇宙空間の「その場」で計測する観測装置を開発しています。現在の主流は静電分析器と呼ばれる観測装置で、二重の球殻状電極間に高電圧を与え、電子やイオンをその間を通過させてエネルギーを選別します。探査機に観測装置を搭載し、宇宙空間から入射する電子やイオンを、1個1個、エネルギーごと、方向ごとに分けて数えます。
 学生時代に携わった磁気圏尾部観測衛星GEOTAIL搭載装置の開発をはじめとして、火星探査機「のぞみ」に携わり、月周回衛星「かぐや」、水星磁気圏探査機BepiColombo MMOでは装置開発責任者です。NASAの編隊磁気圏探査衛星MMSやオーロラ観測ロケットにも装置を搭載してきました。

 ―─これまでで一番苦労したことは?

 齋藤:「かぐや」搭載の観測装置には、最高で±1万5000ボルト、電圧差にすると3万ボルトの超高電圧を使用しました。3万ボルトの超高電圧をかけても宇宙空間で放電しないようにするのは大変で、部品形状の設計から部品の加工、表面処理や装置の運用手順など、さまざまな点で注意と工夫が必要でした。

 ─―水星探査や木星探査の準備でも活躍しています。

 齋藤:水星や木星などの地球外の天体に、我々の観測装置が到達します。これらを用いた観測を成功させるとともに、新しい技術をどんどん取り込んで開発する世界のどこにもない観測装置で、誰もまだ観たことのない世界を明らかにしたいと思います。

(聞き手:藤本 正樹)

齋藤義文准教授

齋藤義文准教授