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ISASニュース

「あかり」遠赤外線全天画像データの公開始まる

No.406(2015年1月)掲載

 赤外線天文衛星「あかり」で観測した遠赤外線(波長65、90、140、160マイクロメートル)の全天画像データがついに完成し、世界中の研究者に向けて公開が始まりました。過去には米・英・蘭の共同ミッションIRAS衛星(波長60、100マイクロメートル、空間分解能3〜5分角)やアメリカのCOBE 衛星(波長60、100、140、240マイクロメートル、空間分解能40分角)による遠赤外線の全天画像がありますが、今回の「あかり」データはこれまでで最も高解像度(空間分解能1分角)な画像です。

 2006年2月に打ち上げられた「あかり」は、16ヶ月にわたって全天サーベイ観測を行いました。このデータからはすでに、天体の位置や明るさをまとめた点源天体カタログが作成され、 2010年3月に公開されて以来、世界中の研究者に使われています。その後のデータ補正技術の向上により、天体の大きさや形などを詳細に調べることができる画像データの作成が可能になりました。

 この遠赤外線画像データからは、太陽系内のダスト、銀河系内に漂う低温(マイナス200度以下)のダスト、そして我々の銀河系の外にある銀河内のダストの分布や温度を知ることができます。星はダストやガスの塊から形成されるので、銀河系内でダストがどのように分布しているのか、周辺の星との関係がどうなっているのかを詳細に調べることで、星がどのように形成されるのかが分かります。また太陽系内のダストからは、太陽系の起源と進化にも迫ることができます。さらに、さまざまな銀河での星形成の様子を調べることで宇宙の歴史の解明も期待されます。このような研究テーマに対して、「あかり」データは遠赤外線で全天を詳細に調べられる唯一のデータであり、これを使ってさまざまな研究が進むことを期待しています。

 本データの作成は、東京大学、宇宙研、東北大学、筑波大学、英国ラザフォード・アップルトン研究所、英国国立オープンユニバーシティの研究者から成るチームによって行われました。

(瀧田 怜)

「あかり」遠赤外線全天画像

「あかり」遠赤外線全天画像
我々の銀河系の中心方向が画像の中心に、天の川が横に伸びるような座標系で描いている。波長90、140マイクロメートルのデータを青と赤に割り当てて合成した。中心付近に見える引っかき傷のようなものは、データ欠落によるもの。