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ISASニュース

ASTRO-Hを通して見る宇宙研とNASA's GSFCの違い

No.406(2015年1月)掲載

 次期X線天文衛星ASTRO-Hの開発は、約1年後の打上げを目指して最終段階を迎えています。ほとんどのサブシステム、観測機器のフライト品が完成し、それらを衛星に組み上げ、数々の最終環境試験が始まろうとしています。

 アメリカのNASA's Goddard Space Flight Center(GSFC)はASTRO-Hの主要な観測装置の二つ、軟X線分光検出器(SXS)と軟X線望遠鏡(SXT)を開発しました。両機器ともフライト品が完成しており、SXSは筑波宇宙センターで最終的な性能試験が行われています。この試験には、多くのGSFC研究者、エンジニアが数ヶ月にも及ぶ長期滞在をして参加しています。

 SXSと組み合わせて使われるSXTは、日本の衛星「あすか」と「すざく」に搭載されたGSFCのX線望遠鏡の最新型です。世代ごとに撮像性能が約2倍向上して、SXTは「あすか」の4倍以上の分解能を誇り、またASTRO-Hの計画当初予定の1.5倍の集光力を達成し、SXSデータの質向上に大きな貢献をします。

 ASTRO-Hには、名古屋大学を中心に日本で開発された硬X線望遠鏡(HXT)も搭載されます。HXTとSXTの開発体制には大きな違いがあります。望遠鏡の光学系の設計・開発を研究者が行うのは同じですが、構造・熱設計にはエンジニアの助けが必要です。GSFCには多くのエンジニアが在籍し、観測機器の設計もサポートしてくれます。一方、宇宙研では、エンジニアは衛星本体に従事し、観測機器まで手が回らないのが現状です。そのため、特に大学を中心とする観測機器チームは、工学部や企業に助けを求めます。どちらの体制の効率が良いのかは分かりませんが、それによって理学部と工学部との間で共同研究・開発が生まれることもあり、ASTRO-Hの宇宙科学以外への貢献度も大きいのかもしれません。

(NASAゴダード宇宙飛行センター 岡島 崇)

ASTRO-H に搭載されるNASAの軟X線望遠鏡(上)と軟X線分光検出器(下)

ASTRO-H に搭載されるNASAの軟X線望遠鏡(上)と軟X線分光検出器(下)