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ISASニュース

西田篤弘名誉教授に瑞宝重光章

No.405(2014年12月)掲載

──瑞宝重光章の受章、おめでとうございます。
西田:多くの人々に助けられました。宇宙研では大先輩の大林辰蔵、小田稔、同僚の鶴田浩一郎、向井利典、工学部門の松尾弘毅、上杉邦憲、中谷一郎。国内の研究者では国分征、大家寛、松本紘、上出洋介。さらには、北米、欧州、ロシア、アジアに多くの僚友を得ることができました。すべて宇宙研を拠点としたためで、ここに職を得たことが最大の幸運でした。

──日本の宇宙空間科学をけん引し、国際化した業績をお持ちです。
西田:地球を取り巻き太陽活動の影響を受けて大変動する宇宙空間に関する研究を進めてきました。その分野が揺籃期だったころに発表した論文が、基本的文献になっています。50年後の今では、宇宙空間科学は太陽系科学の一環と見るべきです。同様に、科学研究に国境という境目はなく、海外研究者とも日常的に意思疎通を図るべきです。業績発信で知名度を高め、日常的な討論で国際コミュニティの一員としての立場を築く。共同研究に参加するだけでなく、立ち上げることも重要。同志でもあり競争相手でもある相手から、学識、技術と成果によって信頼を勝ち取ること。それらの観点から、磁気圏や電離圏など地球周辺空間の構造やそこで起きる物理過程を観測するGEOTAIL計画は大きな成功を収めました。多数の若手研究者が国際的に評価されたのもうれしいことです。

──宇宙研の今後の在り方について。
西田:宇宙研は第一級の科学者集団であり、研究の最前線に位置すること、各自が業務に埋もれず研究者として生きることが大事です。長期的視野で技術開発を奨励すること、大中小規模ミッションのバランスよい遂行、海外ミッションへの参加を併用することも必要でしょう。
 太陽系探査は宇宙科学の最もホットな課題である一方、宇宙研では火星探査機「のぞみ」計画、金星探査機「あかつき」計画の不具合で停滞感があるのは非常に残念。JAXA全体で積極的に取り組んでほしいと思います。科学の研究は新発見を目指すもの、科学ミッションには未知の要素が含まれるわけで、安全が過度に重視されないこと、リスクを取る判断ができることが大事。そこでも、研究者としての信頼感が根本です。
 AOGS(アジア・大洋州地球科学会)での活動でアジアの科学者と交流した経験から、今後のアジア諸国との連帯強化にも期待します。

(聞き手:藤本 正樹)

西田篤弘名誉教授

西田篤弘名誉教授