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ISASニュース

第8回ひので科学会議(Hinode 8)報告

No.405(2014年12月)掲載

 8回目となる「ひので科学会議(Hinode 8)」が11月2〜6日の5日間にわたって、米国オレゴン州ポートランドにおいて開催されました。Hinode 8はその名の通り太陽観測衛星「ひので」に関する研究成果を発表・議論する国際会議ですが、今回は米国の主催で、NASAのLiving With a Star(LWS)プログラムと2013年に観測を開始した太陽観測衛星IRISの科学会議と共同での開催となりました。太陽物理に加え、宇宙天気や太陽─地球間物理など多岐にわたる話題(口頭150件超、ポスター100件超)について発表がなされ、多様な科学者と密な議論ができました。反面、口頭講演がパラレルセッション形式で開催されたため、いろいろな部屋を行ったり来たりしなければならず、落ち着いて聴けた時間は少なく感じました。

 パラレルセッションのためすべての話は聴けませんでしたが、議論された話題の一部を紹介します。まず盛んに議論されたのが、ここ数年の太陽活動極大期中に得られた太陽フレアなどの活動現象の観測についてです。本極大期がこれまでと違う点は、「ひので」やIRISによる空間分解したスペクトル観測によって、イメージングのみでなくドップラー速度などの物理量を直接測定できることです。各発表は個々のデータの解析が多かったのですが、複数の衛星データを用いた統合的な解析研究の重要性を感じました。

 次に活発であったのが、太陽活動周期についてです。残念ながら、現段階で「ひので」の観測に基づいて長期変動について言及しているものはほとんどなかったのですが、「ひので」が継続観測した8年分のデータを今後系統的に解析することの重要性を認識しました。

 最後に、彩層と呼ばれる太陽表面上空にある層についても、IRISと「ひので」の共同観測で得られたデータの解析や輻射流体力学数値計算との比較が盛んに行われていました。彩層は、「ひので」の高空間分解能撮像観測により、そのダイナミックな描像が明らかになってきました。彩層の偏光スペクトル観測は、これからの太陽物理学における大きなディスカバリースペースであることを再認識させられました。この将来観測の実現を目指す、次期太陽観測衛星SOLAR-Cのサイエンスについての討論も1日かけて行われ、その実現に諸外国の多くの研究者が期待を寄せているのだと感じました。

(飯田 佑輔)


口頭講演会場のひとこま

口頭講演会場のひとこま