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ISASニュース

ERGプロジェクトの現状

No.404(2014年11月)掲載

 ジオスペース探査衛星ERG計画は、高エネルギー電子に満たされたヴァン・アレン帯が、いつ、どのように生まれ、どのように消えるのか、そのメカニズムを解明することを目的とします。このために、最も放射線環境の厳しいヴァン・アレン帯の中心部で広いエネルギー帯のプラズマとプラズマ波動を観測し、世界で初めて高エネルギー電子が生まれ、失われる現場の詳細データを“その場で”取得することを目指して開発を進めてきました。しかし、3月の詳細設計確認会以降、ERGの挑戦的ミッションの実現に向けて予期できなかった技術課題などが明らかになり、計画の見直しが迫られる事態となってしまいました。

 計画の見直しに際しては、久保田孝 宇宙科学プログラムディレクタのもとに全研究所的なERG対策検討チームが設置され、見直し後の開発スケジュールの成立性確認などの精査がなされました。対策検討チームとERGプロジェクトの検討の結果、①打上げ時期を当初予定の2015年冬期から2016年夏期に変更する、②高度化イプシロンロケットを使用し遠地点高度を4.5倍地球半径に上げることでヴァン・アレン帯観測軌道を最適化する、③プロジェクト実施体制を強化する、などの対策が取られることが決定され、9月初めにJAXAの計画変更審査を受審しました。最終的には、10月下旬の理事会議にて審査結果が承認され、新しい計画にてプロジェクトを続行させていただくこととなりました。ここに至るまでには宇宙研内外の多くの方々に多大なご尽力と叱咤激励を頂きました。ご協力・応援いただいた皆さまにこの場をお借りして厚くお礼を申し上げます。

 ERGプロジェクトは現在、計画変更後の新しいスケジュールに沿って開発を進めており、10月よりミッション部総合試験1を実施するとともにフライトモデル(FM)製造を開始しています。今後、来年春からの一次噛合せ試験、夏からの総合試験を経て、2016年夏の打上げを目指して開発が進む予定です。

 ERGプロジェクトチーム一丸となって大きな科学成果が挙げられるよう邁進してまいります。引き続きERGプロジェクトへのご支援・ご指導をよろしくお願い致します。

(篠原 育)

ミッション部総合試験に向けた衛星データ処理系の噛合せ試験の様子(上)とミッション部構体の組み立ての様子(下)

ミッション部総合試験に向けた衛星データ処理系の噛合せ試験の様子(上)とミッション部構体の組み立ての様子(下)