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ISASニュース

宇宙科学プロジェクトの実行改善について

No.404(2014年11月)掲載

 宇宙科学ミッションは、世界レベルの科学成果を創出するため、自由な発想に基づき挑戦的かつ高度なミッションを実現し、日本の宇宙科学の活動領域の拡大、日本の宇宙技術の牽引において主動的な役割を果たしてきた。しかしながら、昨今、複数のミッションにおいてコスト超過が顕在化し、プロジェクトの実行段階において開発計画・資金設定の大幅な見直しを余儀なくされており、開発中止に追い込まれたミッションもある。衛星・探査機の大型化やシステムの複雑化、周辺状況の変化に伴い、今までのやり方では対応できず、時代に合った新たな宇宙科学プロジェクトの進め方を構築する必要がある。

 2012年に、宇宙科学プログラムの実行上の改善に関するタスクフォースが設置され、宇宙科学プログラムの現状認識と課題の抽出、実行上の改善に対する提言がなされた。提言の具体的な項目を表に示す。しかしながら、提言に基づく具体的なアクションプランが不十分であり、今なお問題が顕在化している。そこで、2014年に宇宙科学研究所内に検討チームをつくり、科学コミュニティと協力して取り組むべき最重要課題として、アクションプランの再検討を行った。検討の中で、宇宙研全体で議論を行う場を設けて、課題の共有および宇宙科学プログラムの進め方について討議し、実行方策の具体化を行った。


宇宙科学プログラム実行上の改善に対する提言

 本検討では、今後の宇宙研のプロジェクトの在り方という基本的な考え方に立ち返り、宇宙科学プロジェクトのあるべき姿、進め方、プロジェクト体制について議論した。限られたリソースでいかに挑戦的な宇宙科学ミッションを遂行するかが大きな課題である。

 そこで、創造性を生かし技術的にチャレンジする部分の「柔らかな」要求・仕様について段階的なベースライン化を行い、「挑戦リスクの最小化」を重視したプロジェクト遂行を行うこと、プロジェクトマネージャを含むマネジメントチームが分担してプロジェクトを推進すること、ミッションの立ち上げから開発に至るプロセスが円滑に確実に行われるような審査体制とミッションをより良くするための審査会を実施すること、宇宙研の支援の充実や人材育成など、多くの方策を打ち立てた。

 すでに開発中の水星探査計画BepiColombo、X線天文衛星ASTRO-H、ジオスペース探査衛星ERGに本方策を適用し、また現在審議中のイプシロンロケット搭載宇宙科学ミッション提案にも適用しているところである。今後さらに宇宙科学コミュニティと宇宙科学プログラムの進め方について意見交換を行い、より良い方策を随時取り入れることを進めていきたい。今後も新しい挑戦的な宇宙科学ミッションを創出し確実な遂行を進める所存です。

(久保田 孝)