宇宙航空研究開発機構 サイトマップ

TOP > レポート&コラム > ISASニュース > 連載の内容 > ISAS事情

ISASニュース

超小型深宇宙探査機PROCYON完成

No.404(2014年11月)掲載

 PROCYON(プロキオン)という探査機をご存知でしょうか?11月30日に打上げ予定の小惑星探査機「はやぶさ2」に相乗りで打ち上げられる、50kg級の超小型の深宇宙探査機です。

 「はやぶさ2」の打上げに際して発生するH-IIAロケットの余剰能力を生かした、惑星間軌道への相乗り小型衛星が公募されたのが昨年の4月。東京大学と宇宙研の共同ミッションとしてPROCYONを提案し、正式に打上げが決定して開発がスタートしたのが9月。そこから1年ちょっとで完成させなければなりませんでした。しかもミッションは、世界初の超小型の深宇宙探査機バスの実証(なんと小型のイオンスラスタも搭載して軌道制御も行います)、深宇宙向けの超小型通信系の実証、高精度軌道決定のための新しい方式のDDOR(Delta Differential One-way Ranging)実験、小惑星の至近距離を高速でフライバイしながらの高分解能撮像実験など盛りだくさんで、1年で完成するだろうかと心配になったくらいの挑戦的なプロジェクトです。

 短い開発期間でつくり上げるために、地球周回の超小型衛星用に開発されたバス機器を流用し、新規開発箇所を必要最小限に抑えました。それでも、システム設計から、熱構造モデル(STM)試験、フライトモデル(FM)製造、総合試験まで、わずか1年でこなすことは大変厳しいものでした。特に総合試験が始まってからは、毎日何らかの不具合が発生してその対処に追われ続ける怒濤の日々を送ってきました。そんなPROCYONも、ようやく完成の時を迎え、打上げを待つところまでこぎ着けました。

 PROCYONの開発に当たっては、宇宙研をはじめとして、(信じられないほどの)たくさんの方のご支援ご協力を頂きました。ここに感謝の意を示すとともに、そのご恩に報いるためにも、何とかこの挑戦的なミッションを成功に導くべく、プロジェクトメンバー一同、打上げ・運用の準備に余念がありません。

(船瀬 龍)

PROCYONの振動試験の様子

PROCYONの振動試験の様子