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ISASニュース

「はやぶさ2」出荷

No.403(2014年10月)掲載

 各種システム試験をくぐり抜けた小惑星探査機「はやぶさ2」は、宇宙システムとして9月冒頭に完成にこぎ着けた。そして9月17日に実施された開発完了審査にて厳正な評価を受け、開発の手順を正しく履行し要求を満たす機能・性能を有していると認められ、打上げ運用に向けた次の段階に進むことが了承された。「はやぶさ2」は、コンテナに収められて20日相模原を出発し、22日種子島宇宙センターに搬入され、射場作業が着手された。

 2012年3月の詳細設計審査に始まった2年半にわたる開発では、筆舌に尽くし難い数々の難局に見舞われ、七転八倒の毎日であった。とても解決は望めず万事休すと諦めかけたことも、一度きりではない。しかし、宇宙技術を所掌する宇宙研のプロフェッショナルな先生方に、きめ細やかなご指導をいただき、その難局を一つ一つ突破することができた。特に常田佐久所長にあっては、現場の担当者を集め直々の采配という労までいただいた。50年に及ぶ宇宙技術の蓄積と執念を垣間見る思いであり、尊敬の念に堪えない。もちろん、各難題に勇猛果敢に挑戦し、こぼれそうなアイテムを粘り強く拾って拾ってすくってすくって、この短納期の条件下で見事に目標を達して完成に至らしめた「はやぶさ2」プロジェクト班員および協力企業の面々は、私の誇りであり、完成した「はやぶさ2」は自信作だ。

 この後は、電池・火薬類の取り付けや燃料・推進剤の充填といった射場作業を粛々と進めるとともに、JAXAの各部門から人的補強をもらい追跡管制隊を組織して、複数回のリハーサルにて技量を上げ、打上げ運用に臨む計画である。

 我々の仕事場であったクリーンルームは、すでにきれいに清掃され、もぬけの殻状態となっていた。“つわものどもが夢の跡”と感慨ひとしおである。「はやぶさ2」は本来の仕事場“宇宙”を目指して巣立っていった。この後、眼前に立ちはだかる宇宙航海は、決して生易しいものではなかろうが、我々の武運を信じ、突き進む所存である。引き続き、応援・支援を賜りたい。

(國中 均)