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ISASニュース

平成26年度第一次気球実験

No.403(2014年10月)掲載

 『ISASニュース』2014年8月号でお伝えしたように、平成26年度第一次気球実験では、5〜6月の当初実験期間中に気象条件が飛翔可能な条件を満たさず、計画していた実験を一つも実施できなかったことから、急きょ8〜9月に追加実施期間を設定してB14-01実験「大気球を利用した微小重力実験(燃焼実験)」の実施をもくろみました。

 幸い関係各方面のご協力をいただき、8月21日から9月13日の追加実験期間を設定することができました。大気球実験班はお盆明けから北海道の大樹航空宇宙実験場での作業を開始し、粛々と準備を整えました。一方、7月末から8月にかけての気象はといえば、後に「平成26年8月豪雨」と命名される極めて不安定な天候に日本各地が見舞われており、8月20日には広島での大規模土砂災害が発生しました。ジェット気流は相変わらず大蛇行を続けており、B14-01の一実験だけを計画したとはいえ、苦戦を強いられることを覚悟せざるを得ないところでした。

 ところが、我々が実験実施の可否判断に用いている2種類の高層風予測が、共に8月22日早朝に実施可能な風向風速データを示しました。地上天候も22日昼すぎからは雨に変わるとの予報ですが、海上回収作業を手際よく進めることができれば、実験を実施できそうです。そこで、21日深夜から実験準備を始め、22日午前4時27分に放球し、計画通りの飛翔運用を行うことができました。午前7時すぎに実験場東方約25kmの太平洋上において微小重力実験部を高度38.6 kmで切り離し、引き続き気球飛翔を終了させました。微小重力実験の状況については別稿に譲りますが、着水後の微小重力実験部、ペイロード部、気球皮膜をすべて順調に回収して、無事に飛翔運用を完了することができました。

 こうしてわずかなチャンスを捉えることができたのは、実験実施側の周到な準備はもちろんですが、実験をサポートしてくださる方々のご協力あってのことです。突然の実験期間の追加にも対応してくださった関係者各位のご協力に深く感謝致します。

(吉田 哲也)