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ISASニュース

観測ロケットS-310-43号機、研修奮闘記

No.402(2014年9月)掲載

 普段、国際宇宙ステーションの「きぼう」日本実験棟で行われている実験の運用や実験装置の開発に携わっている私にとって、ロケットはまったくの未知の領域です。「知らないものを知りたい!」という純粋な気持ちのほかに、「微小重力実験の場としての観測ロケット」に興味を持ち、実験機器側でなく輸送側の視点から見てみようと、観測ロケットS-310-43号機の打上げ研修に参加しました。

 5月に行われた相模原での噛合せ試験からロケットランチャ班に所属し、機体組み立てや動作チェック、ランチャまわりの配線取り回しなどに携わりました。実物のロケットは図面から想像していたものとまったく異なり、新しい発見があるたび、自分で見聞きし手を動かすことの重要性をあらためて痛感しました。作業の合間には、ほかの班の仕事も見せていただきました。打上げの一連の作業を自分の目で確かめることができたことは、小型ロケットならではの貴重な経験だったと思います。

 試験中、実験装置の不具合や調整不足もありましたが、そのたびに皆で集まり、各分野の担当が議論を重ね、即座に対応が取られます。そのスピード感には、年齢に関係なく一丸となってつくり上げていこうという気概を感じ、組織の柔軟性の違いに良い刺激を受けました。

 悪天候で打上げが延期された際は、激しい雷雨の中、すでにランチャドームに設置されていたロケットの安全を確保した後、ずぶ濡れになって退避しました。緊急性を要する事態でも冷静に対処するベテラン陣の判断力など、見習いたい人やものにたくさん出会えた研修でした。

 実際の打上げの迫力は言わずもがな。その後のクイックレビューで先生方の興奮した報告を聞いているうちに実験側の求める打上げができたことが分かり、自然と安堵感が広がりました。

 奮闘というよりは、目の前のイベントに日々食らいついていくのに必死だった気がしますが、得られたものは計り知れず。次は実験の当事者として観測ロケットに関われるよう、まい進していきたいと思います。

(田丸 晴香)

図1図2

打上げ前のロケット(左)と打上げ後のランチャ(右)。黒いすすに目を見張る。