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ISASニュース

観測ロケット発射装置完成、S-520-29号機打上げ成功

No.402(2014年9月)掲載

 6月末、内之浦宇宙空間観測所に35年ぶりに新しい観測ロケット発射装置(新型ランチャ)が完成しました。8月17日には、初めてこの新型ランチャを用いて、観測ロケットS-520-29号機が打ち上げられました。搭載機器の観測結果は別の号での報告を予定していますので、そちらをお待ちください。

 新型ランチャと旧型ランチャの変更点は大きく2つあります。1つ目はロケットの搭載方式をロケットつり下げ型に変更したこと、2つ目はランチャを自走式から固定式に変更したことです。従来はS-310型ロケットとS-520型ロケットはそれぞれ別のランチャを使用して打ち上げられていました。今回の変更により新型ランチャでは両方のロケットの打上げができるようになりました。また、ランチャに搭載されたロケットへのアクセス性や装置の機能拡張性が向上しました。

 今回、新型ランチャの初号機となったS-520-29号機の打上げ条件には、天候と観測の2つがあります。観測条件は、スポラディックE層という突発的に発生する電離層が出現していることです。天候条件と観測条件の両方が満たされている間にロケットを打ち上げなければなりません。しかし、この条件がなかなか満たされず、3回の延期の末の打上げとなりました。これまで新型ランチャについて各種試験を実施し、機能・性能に問題のないことを何度も確認してきました。しかし、実際のロケットを使った打上げ試験は実施できないため、S-520-29号機打上げはランチャ開発担当者たちにとって神経が張り詰める思いでした。4度目の挑戦でロケットが打ち上げられ、飛翔正常の報告を受けた瞬間は本当にホッとしました。今後は、すべての観測ロケットの打上げを新型ランチャで行います。初号機運用の結果を反映し、長期間運用できるように維持していきます。

(下瀬 滋)

新型の観測ロケット発射装置とS-520-29号機と筆者