宇宙航空研究開発機構 サイトマップ

TOP > レポート&コラム > ISASニュース > 連載の内容 > ISAS事情

ISASニュース

観測ロケットS-310-43号機打上げ成功

No.402(2014年9月)掲載

 観測ロケットS-310-43号機を内之浦宇宙空間観測所から打ち上げました。今回の実験は、液体燃料ロケットが宇宙空間で慣性飛行する環境を模擬し、極低温の液体の流れと熱の伝わり方を観測することが目的です。もともと昨年度の冬に打ち上げる予定でしたが、装置に流れる液体窒素が必要な状態にならず、改修のため延期。その後も次々と新たなトラブルが発生し、改修しては次の問題発生の繰り返しでした。本当にこの夏に打ち上げられるの?という声が聞こえてきましたが、何とか内之浦入りできました。

 内之浦でもいろいろ起きるかなと覚悟していましたが、意外とすんなり当初の打上げ予定日を迎えてタイムスケジュール入り。しかし途中から雲行きが怪しくなり、遠くでピカピカしたと思ったら、あっという間に豪雨と落雷警報。安全な状態を確保して作業を中断し、天候の回復を待ちましたが、打ち上げは延期となりました。

 S-310-43号機の後にS-520-29号機と猛烈な台風11号が控えていたため、何としても打ち上げたい8月4日。天候も良く、手際よく準備が進められ、23時ちょうどにロケットは轟音とともに飛び立ちました。本当に液体窒素入ってるかな、バルブ動くかな、など打ち上がってからも心配が尽きませんでしたが、「液、流れ始めました!」「見たことない流れができています!」などの指令電話越しの言葉に不安が一つ一つ解消され、気が付けば100点、いや120点以上の大成功となりました.液体と気体が混ざり合った二相流の状態もはっきりと捉えられ、将来の軌道間輸送機など極低温推進剤を効率よく利用する推進システムの開発に必要とされる貴重なデータを得ることができました。

 今回の実験では、チーフの更江渉さんはじめJAXA輸送本部を中心としたPI班の皆さんが長期にわたり大変な苦労を重ねてきましたが、問題を解決するため実験班一丸となって協力し合い、成功を手にしました。苦しみも喜びも参加したみんなで分かち合える観測ロケット実験はやはり素晴らしいと、しみじみ感じました。関係したすべての皆さまにお礼申し上げます。更江さん、次は液体水素でやる?

(野中 聡)

S-310-43号機の頭胴部とPI班