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ISASニュース

「はやぶさ2」搭載機器の動作試験

No.402(2014年9月)掲載

 今年の冬に打上げ予定の小惑星探査機「はやぶさ2」のフライト用搭載部品を組み立て、熱環境や振動などの試験を実施し、完成品にするまでの工程である「総合試験」がいよいよ大詰めを迎えています。総合試験の中で、私たちサイエンティストの出番は科学搭載機器の動作確認試験です。ほかのバス機器(通信機や姿勢制御装置など)の組み付けや試験などもあるので、搭載機器の動作試験は時間が限られており、我々にとっては大変貴重な機会です。

 搭載機器の動作確認の山場の一つ、「はやぶさ2」の最も難しくかつ重要なイベントである「小惑星に着陸し、サンプルを回収する」をシミュレーションした試験を、6月24日に実施しました。その一場面をお伝えしましょう。

 21時20分、着陸シーケンスを開始。これからノンストップで試験が実行されていきます。私は手順書とQL画面(探査機の状態を監視するモニタ)を見ながらチェックをしていきます。21時51分、私も開発に加わってきた中間赤外カメラの電源がON。その後、探査機の降下がスタートし(当然ながら衛星は動きません。あくまでもそのつもり)、観測機器は撮像を開始。計画に沿って観測プログラムのカウンタが一つずつアップしていきます。途中の様子は省略しますが、0時35分すぎには着地してサンプル収集のための弾丸発射(のつもりの疑似信号)を確認。その後、試験終了シーケンスに入ります。

 まさに固唾をのむ3時間、シーケンスを止めることなく無事終了。各観測機器は、衛星が収録したデータを取得して問題ないことを確認。私の手元の手順書のチェックシートもすべて問題なし。実にクール! ここまでうまくいくようになるまでの長い道のりが思い出されます。

 機体の組み立ても完了して、8月31日に無事、報道公開を実施しました(表紙)。この後、搭載機器の動作試験がもう1回残されています。それが無事終われば、開発完了審査会を経て総合試験は終了。探査機を種子島に輸送し、いよいよ打上げオペレーションが開始されます。

(田中 智)