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ISASニュース

国際学会「Origins 2014」開催

No.401(2014年8月)掲載

 「Origins2014」は、国際アストロバイオロジー学会と国際天文学連合バイオアストロノミー分科会の合同で、7月6〜11日に奈良県新公会堂の能楽ホールで開催された。それぞれ長い歴史を持つ学会であるが、合同学会は2011年にフランスのモンペリエで初めて開催され、今回が2回目になる。参加者は、日本から113名と海外から248名(30ヶ国)の合計361名と、海外からの参加者が多い。招待講演者は、2名のノーベル賞受賞者(J. SzostakとA. Yonath)、国際天文学連合会長(N. Kaifu)など22名、豪華な顔ぶれである。招待講演者は滞在費も旅費も本人が負担して参加するのが伝統である。NASA、ESAからも多くの参加者と招待講演があった。

 初日の開会講演に続き、2日目はKepler望遠鏡の最新の成果、惑星形成論、惑星のハビタビリティー、宇宙空間での有機物合成、キラリティ、隕石や宇宙塵の有機物分析など、天文学や地球科学の分野のセッションが行われた。3日目は宇宙探査を中心としたセッションで、木星氷衛星探査機JUICE、火星探査機MSLのローバCuriosityの成果、ExoMars計画などの報告があった。とりわけ、Curiosityが有機化合物をおそらく検出したという成果は、すでに『Science』誌上で発表されてはいたが、その詳細を聴くことができた。日本からも、国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」で有機物・微生物の宇宙曝露と宇宙塵・微生物の捕集を行う「たんぽぽ計画」、種子への宇宙環境の影響を調べる実験「Seeds in Space」、次世代赤外線天文衛星SPICA、小惑星探査機「はやぶさ2」などの発表があった。4〜6日目は、RNAワールド、合成生物学、分子系統学など生物学関連のセッションが(5日目は4会場並行で)開催された。

 大型台風の接近を心配する毎日であったが、幸い奈良を避けて通り過ぎた。檜の香りの能舞台、開会式での能(高砂)、懇親会での雅楽の演奏など古い日本文化にも触れて、国内外の参加者に大変好評な学会であった。自然科学研究機構、東京工業大学地球生命研究所(ELSI)、多くの財団とともに、宇宙研にも財政的ご支援を頂いた。この場を借りて心から感謝させていただきたい。

(東京薬科大学教授・宇宙研客員教授・宇宙理学委員/山岸 明彦)

檜造りの能舞台でのA. Yonath博士の講演