宇宙航空研究開発機構 サイトマップ

TOP > レポート&コラム > ISASニュース > 連載の内容 > ISAS事情

ISASニュース

第3回「あかり」国際研究会開催

No.401(2014年8月)掲載

 7月9〜11日に、英国オックスフォード大学にて、赤外線天文衛星「あかり」の成果を分野横断的に議論する研究会「THE UNIVERSE IN THE LIGHT OF AKARI and Synergy with future Large Space Telescopes」が開かれました。2009年に東京大学、2012年に韓国済州島での開催に続いて3回目となります。

 研究会で取り上げられたテーマは太陽系内天体から数十億光年彼方の銀河まで広い範囲にわたりましたが、分野の垣根を越えた研究者の活発な議論がありました。発表内容も、データ解析ノウハウの蓄積による、より精密・高度な解析、地上望遠鏡やほかの衛星によるフォローアップ、そして多波長データの解析など、「あかり」データを中心として研究がどんどん広がっていることが実感されるものでした。一方で、何人かの参加者から「我々はまだ『あかり』データのごく一部の情報しか利用していない」という声も聞かれました。

 100名近い参加者には、長年「あかり」に携わっている“常連”研究者はもちろんのこと、大学院生など若手の新規参加者が多くいたことも、「あかり」データを用いた研究が新しい段階に入ったことを印象づけました。最終日に英国の研究者がわざわざ発言を求め、「今まで参加した『あかり』の研究会の中で最もエキサイティングで、充実していた。特に若手の活躍が目覚ましかった」とスピーチしたほどでした。

 一方、ESAの「あかり」科学運用の担当者として長年にわたって「あかり」を支えてくれたAlberto Salama氏が一昨年に他界し出席がかなわなかったことが、充実した研究会だっただけにいっそう寂しく感じられてなりませんでした。

 研究会の最後に、第4回を2017年ごろに日本で開催することが提案されました。これは、現在進行中の「あかり」データプロダクト作成が完了し、多くの処理済みデータが公開されて解析が進んでいるタイミングです。今回よりさらに多くの参加者によって、新しい成果が発表され、活発な議論が行えるよう、データの作成・公開作業に引き続き努力していきたいと思います。

 なお、本研究会の開催に当たっては、JSPS(日本学術振興会)London Symposium Schemeによる支援を頂きました。あらためてお礼申し上げます。

(山村 一誠)

バンケット会場となったカレッジの建物の前で集合写真(提供:JSPS London)