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ISASニュース

平成26年度第一次気球実験

No.401(2014年8月)掲載

 平成26年度第一次気球実験は、5月14日から連携協力拠点大樹航空宇宙実験場において実施されました。昨年度は気球システムの不具合発生のために1年間大型気球の運用を見送った経緯があり、今季こそは大型気球による宇宙科学実験を実施しようという強い意気込みで北海道大樹町に赴いたところでした。

 大気球実験室では、昭和50年代に三陸大気球観測所に整備されその後大樹航空宇宙実験場に移設された、遠距離長時間追尾受信設備(飛翔中の気球を追尾し、無線コマンドを送信し、科学データを受信するための設備)の更新を進めてきました。昨年度末、大気球指令管制棟屋鉄塔上の主系パラボラアンテナを更新し、3年間に及んだ作業を完了しました。5月20日に測風ゴム気球を放球し、成層圏下部までの高層風を測定すると同時に、新たな遠距離長時間追尾受信設備の健全性を確認し、その後の放球に備えました。

 5月28日にはB14−01実験「大気球を利用した微小重力実験(燃焼実験)」の準備を完了しましたが、気象条件がなかなか実施可能な状態となりません。6月上旬に神奈川県箱根町で400mmを超える記録的大雨が降ったときの雨雲レーダーの画像で、強い雨雲が南から北に次々と流れ込んでいたのを覚えていらっしゃる方も多いと思います。このとき、普段は西から東に吹いている高度10〜15km付近の偏西風(ジェット気流)が大きく蛇行し、南から北に吹いているような状態でした。大樹町での気球実験では、気球を偏西風で十勝東岸の太平洋上に送り出し、その後成層圏上部のゆっくりとした東風で十勝沿岸まで戻すことができる気象条件が、測定器や気球皮膜を回収して安全に実験を実施する上で大変重要です。ところが、今年の5〜6月は偏西風の蛇行が極めて大きく、実験可能な東向きの状態を見いだせず、結局6月9日にB14−01実験の見送りを決断することとなりました。また6月下旬の実施を目指したB14−03「皮膜に網をかぶせたスーパープレッシャー気球の飛翔性能評価」についても、準備は完了したものの、実験期間が終わる6月30日までに実施可能な気象条件を見いだせず、実施を見送ることとなりました。

 宇宙研では、本年度は5〜6月の北海道大樹町での国内実験と11月の海外気球実験を計画していましたが、第一次気球実験で一つの実験も実施できなかったことを鑑み、急きょ8〜9月にも大樹町での国内気球実験を実施することとしました。実験期間の制約からB14−01実験のみを準備することとなりますが、実験の実施に向けて最善の体制を構築しますので、関係各方面の方々のご協力を引き続きお願い致します。

(吉田 哲也)