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ISASニュース

ASTRO-H 一次噛合せ試験

No.400(2014年7月)掲載

 X線天文衛星ASTRO-Hの開発状況については2013年6月号に続いて3回目の報告となります。2013年6月に機械環境試験を終え、8月からはFM(Flight Model:フライトモデル)の機械的、電気的I/F(インターフェース)や機器間の干渉確認を目的とした一次噛合せ試験(以下、一噛み試験)が始まりました。

 ASTRO-Hのバス構体は、八角形のベースパネルと8枚の側面パネルから成る八角柱の形状をしており、多くの機器はその内側面に取り付けられています。従って、衛星を組み上げてしまうとほとんどの機器にアクセスすることができなくなります。一方、電気的I/Fの確認のためには各信号波形を確認する必要があるので、一噛み試験の前半では側面パネルを開いた状態で試験を行いました。2013年11月には前半の山場として、バス機器と一部の観測機器を参加させて昼夜連続のネットワーク総合試験を実施し、データ処理系の性能を確認しました。

 2014年1月からは科学観測用センサ(以下、センサ機器)を含めた衛星全系を組み上げた後、電源系/姿勢系/通信系/センサ機器などの各種総合試験を行いました。先述の通り、ASTRO-Hは組み上げ後は内部機器にアクセスできません。しかもセンサ機器のほとんどは衛星の内部に搭載されます。センサ機器のI/F不整合による手戻りリスクを低減するために、ASTRO-Hでは各センサ機器を筑波に搬入した後、End-to-End試験を実施することを徹底しました。センサ機器ごとの試験で電気的I/Fや試験手順を十分に確認することができたため、センサ機器の総合試験では大きな手戻りはほとんど発生しませんでした。

 2014年5月には一噛み試験の総仕上げとして、全機器を動作させて機器間の干渉を調べるFunction Detail試験(FNC-D)を丸2日かけて実施しました。干渉の有無を確認するにはリアルタイムにノイズ評価を実施する必要があるため、センサ機器チームごとに解析用端末を持ち込み、シフトを組んで常時監視をする体制を取りました。

 本稿作成時点では一噛み試験が終了し、単体環境試験フェーズに入りました。その後、11月から総合試験を開始する予定です。

(夏苅 権)

FNC-D試験の様子。高発熱機器を冷やすために多くの送風機を使っている。